品質管理を企業全体に対して実施していくと、どのような効果があるのかを製造部門を中心に整理してみると、次のような内容が挙げられます。
以下の項目を自分の社内や職場の状況と対比して考えてみてください。もし、以下のような状況になかったり、効果があまり得られていないとすると、「品質管理」の方法のどこかに問題があるか、本質的なものの見方や考え方が欠如しているなどが原因だと考えられますので、これを機会に品質管理体系の総点検をされてみてはいかがでしようか。
生産活動は経営活動の一環ですので、調達活動や販売活動の成果が適切でなければ生産活動は計画通りに進まず、生産性の悪い活動を強いられることになります。生産活動は、市場や顧客の需要を満足させるような製品またはサービスを、企業として適正な利益が得られるように生産することを目的としていることは前述した通りです。このような生産活動を計画する場合には、市場や顧客の要望である次の3つの条件を基本的な情報として計画していかなければなりません。
(1)品質(Quality) 作り出す製品やサービスの品種・品質や仕様が顧客・市場の要望に適合していなければなりません。顧客が必要としないものを作っていたのでは売れることはありませんし、他社の製品より粗悪であったり、使用中に破損したり使いにくかったりすれば、その製品を買うことはしないでしょう。
(2)価格(Cost) 同じ品種・品質で、顧客の要望する時期に要望する数量を提供できた場合でも、価格が他社より高くては自社の製品は売れません。また、品質や使い勝手が良くて便利な製品ができても、高い価格では買い手は少ないでしょう。価格が安くなるほど買い手は多くなってきます。
(3)納期(Delivery) さまざまな事情によって顧客や市場側の買う時期や買う数量は異なります。このため、顧客の要望する時期に必要とする数量を提供できなくては売れないことになります。「必要なモノを、必要な時に必要なだけ作る」フレキシブルな生産体制の構築が欠かせません。
ここで注意すべきことは、例え価格だけが他社より安くても不良品の含まれる可能性が高かったり、顧客が指定した納期が守れなかったりしたのでは、不良や納期遅れによって生ずる損失の方が価格の安さを上回り、結局、顧客にとって高い買い物になってしまい、顧客を逃してしまうことです。
以上の3つ(品質、価格、納期)を「需要の3要素」と呼びます。良い品質のモノを安く早く作って顧客に提供するということです。
加えて、ある期待する利益をあげるためには、これだけの原価で納めなくてはならないという原価の問題があるので、この「需要の3要素」を「生産の3条件」とも言います。
このような需要の3要素または生産の3条件が明らかでなければ、企業の利益増大に貢献する計画的な生産活動を行うことができないばかりか、市場の需要に適応し、生産性の高いスムーズな生産活動を遂行できないことになります。
次回は、本稿を踏まえて品質管理についての議論を歴史的経緯から眺めていきます。なぜいま品質管理に取り組まなくてはならないかがわかるはずです。ご期待ください。
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MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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