品質管理のための代表的な統計手法である実験計画法について、実践的な手法を短期間に習得したいと希望している読者に向けて、Excelを使って効率的に独学できるような解説を行う。
本連載のテーマは、品質管理の分野で利用できる統計的方法の内容とその実践です。品質管理が扱うテーマは幅広く、商品の企画・設計からアフターサービスまで、企業および組織のすべての活動にその考え方がかかわってきます。
本連載では、統計的方法の適用事例として、ある工程で製造された製品が規格を満たすかどうかといった狭義の品質管理の事例、商品の企画・設計の事例を取り上げますが、方法自体は、上手く応用することによって、これに限らずすべての品質管理の場面で適用することが可能です。
ちなみに統計的方法と聞くと数学的なイメージを強く抱かれると思いますが、難しい計算はすべてソフトウェアが正確に実行してくれます。ただ、専門の統計ソフトウェアを使った方法を採用しても、そのソフトを使った分析ができなければ意味がありません。ところで、皆さんの多くがすでにお使いのExcelは、統計的方法に関するさまざまな機能を搭載しています。そこで、本連載では、統計的方法に関する知識と併せて分析スキルが習得できるよう、Excelを利用した分析の方法を紹介します。
まず、品質管理とデータとの関係を考えてみます。品質の良しあしは、何らかの特性を測定することにより明らかになりますが、その特性について測定した記録がデータです。データを利用することにより、個々の製品に対する客観性な評価が可能になります。また、複数の製品について測定したデータをまとめることによって品質全体の状況把握が可能になります。品質は、データで評価するものであり、データが存在しない品質管理はありえません。
また、とても重要なことですが、いくらデータを記録したからといって、そのデータの精度が低ければ意味がありません。現在は、機械化が進みすべての製品に関するデータを正確に記録できる現場もありますが、すべての現場でそれを実現するのは不可能です。そのような現場では、精度の高いデータが測定できる仕組みを構築して、その仕組みに基づき、正しい測定が実施できる体制を構築してください。また、できる限り多くの製品を測定しようと無理をして、精度の低いデータをたくさん記録するよりも、正しい手順で抜き取り検査を行い測定したデータの方が、当然役に立ちます。
統計的方法を用いることにより、抜き取り検査で測定した一部の製品のデータから全体の状況を推測することが可能になるからです。ここで、統計学では、抜き取り検査で実際に測定した製品を標本、製品全体を母集団として区分して考えます。
データは、何らかの対象を測定することにより記録されますが、測定の仕方には、次の4つの方法があります。
これら測定方法の中で、客観的なデータが得られる測定方法は1と2です。「1.測る」は、体重や身長のように計測機器を用いて測定する方法です。データは、計測機器の精度が許す限り小数点以下何けたでも測定できる連続量であることが特徴です。「2.数える」は、不良品の数のように対象の数を数えて測定する方法です。全体の数に占める比率を計算できることが特徴です。
「1.測る」と「2.数える」はデータが数値で記録されることから数量データと呼ばれます。一方、「3.見る」や「4.聞く」で測定を行い得られるデータは、品質を等級(Aランク〜Eランク)で測定する場合など、文字(カテゴリと表現する)で記録されることからカテゴリデータと呼ばれます。
また、文字データは、いま述べた等級のように順序性がある場合と、機械の型番のように、順序性のない場合があります。順序性のない場合は、厳密な文字データとして処理することになりますが、順序性のある場合は、その順序性の情報を基にカテゴリを数値で得点化して、数量データとして分析することも実用的に行われます。等級の例では、Aランク→4点、Bランク→3点、Cランク→2点、Dランク→1点のように得点化します。
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