工場の自動化が進む中でより重要性を増している「設備管理」について解説する本連載。第7回は、「設備投資計画」をテーマに、設備投資計画の特徴、設備投資の種類、設備投資の分析法、設備投資案のランク付けなどについて説明する。
工場計画は、工場の建設計画や職場の配置計画などを行うことですが、経営構造計画ともいわれ、工場の生産構造を立案、決定することが中心的課題となります。この工場計画によってモノづくりの形態が決定づけられるといっても過言ではありません。
工場を最も合理的な生産活動の場として推進する工場計画では、方針決定、基本レイアウト、建築設計、詳細レイアウト、移動/設置などの事項が検討されます。この中で、方針決定については、長期的な観点に立脚した経営戦略に従い、工場の基本方針が立案されます。それに伴って、検討される項目としては、投資計画、生産品目/生産数量計画、工場能力、組織、日程、期待効果などが挙げられます。
今回は、これらの項目の中で「設備投資計画」について説明したいと思いますが、このような工場計画としての視点から検討を行い、設備投資計画を立案していかなければなりません。しかしながら、昨今の企業における設備投資では、安易に投資をしてしまい多額の減価償却費の負担によって、思い通りに利益を確保できていない企業が多くあります。ぜひ、本稿を今後の設備投資計画の参考にしてください。
⇒連載「生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり」バックナンバー
改善を目的とした設備投資は一つの改善手段であるにもかかわらず、設備計画部門にその実行が移された時、“改善=設備計画”となって、設備計画が目的であるとの考えがなきにしもあらずです。
改善の推進を行う設備計画の推進部門では、常に目的と手段をよく理解して「設備を作らなくても、同等の成果を上げ得る手段」を考えながら設備計画を推進することが大切です。そのためには、改善のステップと改善対象範囲をよく理解し、認識した上で設備計画を進めていくことが必要です。
改善活動は、企業を取り巻く厳しい事業環境を克服する軽量化経営に徹した経営計画の一環として位置付けられていなければなりません。
そのためには、図1の改善ステップをよく理解し、常に源流にさかのぼって市場や製品の動向に着目し、適切な設備開発を図ると共に技術面の課題は早期に解決して、タイムリーに、生まれの良い高性能の設備を計画していくように心掛けていくことが必要です。
図1の中で「設備計画」は、改善後のプロセスにおける機械設備の位置付けを明確にし、設備のランニングコストも含めたトータルコストの低減と、信頼性の向上を通してプロセス全体の効率を向上するための計画を指します。また「設備設計」は、効果や費用、日程などの設備計画を満足するための具体的な詳細機構の設計と、設計機能を計画通りに発揮できる設備製作、調整、立上げ、稼働計画などの設計をいいます。
経営改善の手段は無限にありますが、「設備計画」という点から改善の対象範囲を限定し、その中で「改善のための設備計画の位置付け」を考えてみたいと思います。“改善”は広義には合理化の、狭義にはST(Standard Time)低減の一手段です。1.1項で説明しましたが、目的と手段の関係を良く理解し、他の手段で環境改善を図った後の設備計画が、結果的には「生れの良い設備」を生み出す必要条件となります。
それでは、「生まれの良い設備」とは、どのような機械設備のことをいうのでしょうか。タイムリーに高性能を発揮する「生まれの良い設備」は、以下の要件を具備していなければならないとされています。
そのためには、市場の製品動向を把握すると同時に、徹底した現状分析と評価によって、対象となる生産システムにおける設備の役割を最適にする必要があります。特に、多品種少量生産の傾向にある昨今の事業環境においては、生産計画(物の流し方)の良しあしによっては、設備効率を左右する主因の一つとなってきていますので、生産システム(物の作り方)の分析と同時に、必ず生産計画についても分析し、対象とする設備に対する物の流し方を改善してシステム化しておくことが大切です。
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