方法改善は「4つのポイント」を見逃さないことがコツ!!実践! IE:方法改善の技術(1)(1/4 ページ)

人・設備・モノのムダを見つけて改善する。製造業の原価低減に欠かせない3つの要素のムダ発見ために、インダストリアル・エンジニアリングにおける方法改善の技術を紹介していきます。

» 2009年10月29日 00時00分 公開

「実践! IE:方法改善の技術」連載目次

第1回:方法改善は「4つのポイント」を見逃さないことがコツ!!

第2回:方法改善の手順:目標の設定と詳細分析

第6回:動作経済の原則1:身体部位の使用についての原則

全9回:連載記事の一覧


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1:IEにおける「方法改善」とは?

 IE(インダストリアル・エンジニアリング:Industrial Engineering)とは何かの説明にはいろいろとありますが、おおむね、「生産の3要素である「人(Man)」「設備(Machine)」「モノ・材料(Material)」を効果的に統合し、最良の「Q(Quality)」「C(Cost)」「D(Delivery)」いわゆる「良いモノを、安く早く作る」を獲得するために、工学的な手法を利用し最適な生産システムの設計・改善・構築に関する技術・技法の体系」と定義付けられるのではないでしょうか。

「作業測定の技術」と「方法改善の技術」は、工場や職場の(科学的)管理には欠かせない技術

 IEは、テーラー(Frederick Winslow Taylor:1856-1915)の時間研究(Time Study)の結果から得られた「作業測定の技術(Work Measurement)」と、ギルブレス(Frank Bunker Gilbreth:1868-1924)の動作研究(Motion Study)の結果から得られた「方法改善の技術(Method Engineering/Study)」が、IEの二大柱といえますが、この「作業測定の技術」と「方法改善の技術」は、それぞれが単独で活用される技術ではなく、相互に関連性を持たせながら作業改善を進めていくべきものです。例えば、標準作業や標準時間の設定がなければ、生産システムが立案できないばかりか、生産の負荷量や余力の把握もできません。このようなことから、「作業測定の技術」と「方法改善の技術」は、工場や職場の(科学的)管理には欠かせない技術であるといえます。

 「方法改善の技術」は、改善そのものの技術ですが、「作業測定の技術」は、工場や職場の(科学的)管理のための基準設定の技術であると同時に、その改善における効果量の測定技術でもあるわけです。

 生産現場の改善活動の目的は「原価低減」であり、求めるところは、作業改善による生産性(産出量÷投入量)の向上が目標です。

 しかしながら、その原価低減活動が単に「生産性」のみを追求し、環境問題や人間性の尊重といった時代背景の中にあって、「経済性」を狭義に解釈するあまりに、原価低減によって公害や人間性の問題があまり考慮されない、利益さえ得られればいいというような手段は、決して受け入れられるものではありません。そこで、このような発想が出てこないとも限らないということから、「“最適”な生産システムの設計・改善・構築」という表現が意味を持つことになります。

 また、「生産性向上」についても、「原価低減」の側面から少し補足しておきたいと思います。「生産性向上」は、インプットに対するアウトプットの比率を大きくすることであるといったとき、「原価(Cost)低減→利益の向上」をイメージしてしまいますが、収益は原価だけで決定付けられるものではありません。

 企業にとっては、継続的な利益の確保が必要であって、当然のことではありますが、品質(Quality)が悪ければ商品価値が下がるだけでなく、売上高自体の減少をも引き起こしてしまいます。また、納期(Delivery)が守られなければ顧客からの信用が得られず、これも売上高の減少を招いてしまいます。特に、国内生産の最大のポイントは、品質と納期がシッカリと守られていることが重要です。おそらく、原価(Cost)だけの狭い範囲の原価低減だけを対象にすれば、東南アジア諸国に勝つことはできないでしょう。

 このように、生産性向上の側面から、私たちの製造現場の役割を考えてみても、IEの本質はやはり「Q、C、D」の総合的な向上であることには議論の余地はありません。また、優れた「Q、C、D」を生み出す製造現場の資源は、生産の3要素である「人」「設備」「モノ・材料」を効果的に統合することであるといえます。そして、より多元的な観点から、常に「最適な生産システムの設計・改善・構築」を志向し、不断の、そして無限の改善を実践していくことが重要なことではないでしょうか。

 ここでいう「改善」とは、現場における単なる作業手順や作業動作のみの改善を指すのではなく、あらゆる業務(作業)のやり方、ルール、組織、管理の仕組みなどを含んだ経営全般にかかわる総合的な改善を指します。称して「方法改善」という方が、より広い意味で適切といえます。

 私たちの改善活動においては、作業には常に改善の余地があり、最善の方法も、「今日限りの“最善”」という考えで、決して現状にとどまることなく、改善を積み重ねて前進していかなければなりません。

「日常の管理」と「業務の改善」

 さらに、私たちが行っている日々の業務を分析してみると、「日常の管理」と「業務の改善」の2つの面があります。

 日常の管理とは、標準化された水準値を一定に保っていく「維持管理」を行う活動をいいます。また、業務の改善とは、目標を現在の水準値より高く決めて、改善活動によって「現状を打破」しながら、これを達成していく活動を指します。この2つの目的のために、いわゆる「管理サークル:P(Plan)→D(Do)→C(Check)→A(Action)」を実践していかなければなりません。

 このように「日常の管理」と「業務の改善」は、車の両輪のごとく両立していることが必要です。従って、いずれかのみでは工場のモノづくりの発展を期待することはできません。「業務の改善」で一歩前進させ、「日常の管理」で、その水準を維持し、また「業務の改善」で次の目標に向かって前進していくという実践サイクルが必要です。

 すなわち、工場の管理水準は、「日常の管理」と「業務の改善」を段階的に積み重ねていくことによってのみ向上させていくことができるといっても過言ではありません。結局は、最善の結果を生むように、業務を効率的に進める手段を選ぶことが、管理するということだと思います。

 さらに、管理は人間の尊重を基本にして推進しなければならないことはいうまでもありませんが、人を操作的に働かすことのみを目的にした管理は、やがて行き詰まり、破たんを来してしまいます。

図1 業務改善の必要性 図1 業務改善の必要性
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