私たちの仕事における「不安定」とは、モノづくりのアウトプット、つまり生産の3条件「Q、C、D」が「不安定」となることです。「Q、C、D」が不安定になる原因を排除することが、結局はムダを排除していくことになります。
生産の3条件の中で「C」は作業時間のバラツキ、「D」はリードタイムのバラツキとしてとらえると、より理解しやすく、改善に取り組みやすくなります。また、作業改善の対象となる「不安定な作業」に、共通的でよく認められる事象として次の項目があります。
不安定な作業に共通する事象
これらの条件のうち、どれか1つでも当てはまるならば、改善すべき課題が存在すると見てよいですし、2つ以上当てはまる場合はかなりの改善効果が期待できます。
この中で特に改善の対象として最も見つけやすいのは、「3.時間のバラツキが大きい」です(図3)。典型的なものとしては、調整作業、合わせ作業、段取り作業などがあります。
例えば動作のムダの面から見ると、使用する身体部位が、理想とする「指、手首、前腕」の範囲で動作を完了できず、上腕、肩、胴や足にまで及んでいたり、動作の距離が長い、あるいは、動作に重量などの抵抗があったり、方向の変更などの人為的な調整を要するなどの場合などがあります。
時間のバラツキが大きいということは、大体において「2.作業が難しい」に当てはまります。さらに、時間のバラツキが大きいということを別の面から考えてみると、短時間で完了することに、時には長時間をかけているということになります。これがいつもうまくいけば、バラツキの総計の時間分だけ作業時間の短縮が可能だということを意味しています。つまり、「3.時間のバラツキが大きい」という条件が成り立つと、同時に「1.時間が長くかかる」も成立します。
つまり、「3.時間のバラツキが大きい」という条件は、「1.時間が長くかかる」「2.作業が難しい」を併発させますから、ある意味で3は「不安定な作業」の基本条件であるといえます。加えて「3.時間のバラツキが大きい」という条件は、「不安定な作業」であることから「4.危険がある」も併発しやすいのが一般的です。
以上のことから、「3.時間のバラツキが大きい」を手掛かりにして「不安定な作業」を判別できることが理解いただけたのではないでしょうか。
この方法ならば、手早く、しかも容易に改善し、ムダを排除していくことができます。
また、安定した作業方法を目指して改善していくことは、あらゆるムダの排除を進めていくことでもありますが、高い精度の標準値を獲得したことにもなります。その結果として、余力を最少とした「必要なモノを必要なだけ、必要なときに作る」という、生産管理体制の基盤づくりへと大きく近づいていくことができます。
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以上、方法改善に取り組む時の大切な「4つのポイント」について説明をしました。改善を行う場合には、常にこのポイントを念頭に置いて改善を進めていくことが重要です。次回から2回にわたって、最大限の改善効果を得るための「方法改善の手順」についてお話ししたいと思います。ご期待ください!!
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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