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» 2022年05月23日 07時00分 公開

生産性の高い機械設備を維持していくための「保全組織」とその業務とは生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり(4)(1/4 ページ)

工場の自動化が進む中でより重要性を増している「設備管理」について解説する本連載。第4回は、設備保全のための「保全組織」とその業務内容について解説する。

[福田 祐二/MIC綜合事務所所長,MONOist]

 設備保全は、主として生産性を高めるための保全のことをいいますが、これまでに説明しました各種の保全方式の利点を取り入れて「生産性の高い保全」つまり、もうかる設備保全を目的とした保全でなければなりません。設備を導入する時点から、たとえ故障が発生しても修理がしやすいように、さらには単なる故障の予防にとどまらず、生産性を積極的に向上させる保全活動を目指していかなければなりません。

 従って、設備の一生涯を通して、“ライフサイクルコスト”と“設備の劣化損失”との両方を引き下げ、企業の収益性を高める保全であべきであると考えます。ライフサイクルコスト(LCC:Life-Cycle Cost)とは、機械設備の費用を、調達〜使用〜廃棄の各段階をトータルとして管理していく考え方です。訳語として生涯費用とも呼ばれます。生産性の高い設備保全は目的であって、それを達成する手段が、事後保全(BM)、予防保全(PM)、改良保全(CM)、保全予防(MP)などの具体的な活動となるわけです。今回は、その目標を達成するための保全組織や保全業務は、どのようにあるべきかについて考えてみたいと思います。

⇒連載「生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり」バックナンバー

1.保全の組織

 設備管理を効果的に進めるためには、工場に最も適した機械設備の保全組織を作ることが必要です。これを運営する保全担当部門の組織は、工場規模や生産方式などによっても異なりますが、一般的に多く採用されている方式に「集中保全」があります。「集中保全」は、あらゆる保全作業と保全要員が、1人の管理者の下に組織化されて、作業標準の設定、保全計画の立案、設備管理などの保全業務が1カ所に集中して行われる形態をいいます。

1.1 「集中保全」の長所と短所

 保全組織としての「集中保全」の長所と短所は以下の通りです。その他の保全組織の基本パターンには「地域保全」「部門保全」などがありますが、これらの説明は省略します。

  • <長所>
    • 機動力が高い
    • 人員配置に柔軟性があり、結果として余剰人員が生まれにくい
    • 保全用の各種設備や工具類が共有できるので購入経費が抑制できる
    • 保全要員の教育や訓練を効率的に行うことができ、分業や専門化が進み、高度な専門技術や技能を修得することができる
    • 保全に関する責任範囲を明確にすることができる
  • <短所>
    • 生産部門との組織的な距離が生まれ、生産部門との一体感に欠ける場合もある
    • 保全要員の日常の行動範囲が広くなり、業務の監督や労務管理が難しい
    • 広い工場の場合、現場との往復時間が長く、歩行に費やすムダが多くなる
    • 保全の多能工化が要求されるため、特定設備に対する習熟が遅くなる

 以上説明しました「集中保全」の長所と短所を鑑み、一般に次のように機械設備の保全を行うのが良いとされています。

  1. 保全部門は、生産部門と同格の別部門とする。特に自動化の進んだ工場ほど、この方式が効果的である
  2. 保全部門は、生産各部門に分散設置すると保全要員や諸経費、運営の面でロスが多いので1カ所にまとめる
  3. 新規の機械設備を導入する際には、保全部門の意見が十分取り入れられる組織であること

1.2 設備管理組織の進め方

 保全組織として多用される「集中保全」の考え方を踏襲した事例の一つとして、工場内に保全業務全般を担う設備課を設置して、機械設備を使用する現場と保全部門の立場が並列(同列)にあることが望ましい保全組織の設置が考えられます。

 しかし、中には機能の一部を類似の作業内容として、他の組織で行われていることもしばしばあります。例えば、機械設備の検査を製品検査の担当組織の中に含めて実施している場合も見受けられます。このような例では、運用を誤ってしまうと設備管理を行う目的や機能が軽視されてしまい、設備管理としては十分にその効果を発揮することができないことになりかねませんので、注意する必要があります。

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