理化学研究所は、タンパク質をマイクロアレイに固定化し、1滴の血液から新型コロナウイルスの変異株に対する抗体量を8分で自動測定するシステムを開発した。実用的なシステムの開発により、抗体価の迅速な精密検査が可能になる。
理化学研究所は2022年8月2日、1滴の血液から、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株に対する抗体量を8分で自動測定するシステムを開発したと発表した。今後新たに生じる変異株についても、ワクチン接種の効果を検査できる。千葉大学、アール・ナノバイオとの共同研究による成果だ。
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同システムは、理化学研究所 主任研究員の伊藤嘉浩氏らが開発した、有機化合物の固定化技術「何でも固定化法」を応用した。まず、基板上に非特異吸着を抑制する光反応性の合成高分子を皮膜し、ウイルスのタンパク質をスポット状に配置。その後、紫外線照射による光架橋でタンパク質を固定化し、マイクロアレイチップを作製した。固定化するタンパク質は、新型コロナウイルスの内部に存在するヌクレオカプシドタンパク質と、変異株ごとに異なるスパイクタンパク質の一部だ。
このマイクロアレイチップに血液を滴下すると、血液中にタンパク質と結合する抗体が存在した場合は発光する。その発光シグナルをCCDカメラで撮影することで、各抗体量を測定できる。
指先から採取した5μlの血液をカートリッジに入れ、マイクロアレイチップと共に装置にセットすると、自動で測定して結果を装置上に表示する。測定結果は、ELISA法(酵素結合抗体吸着法)の結果と、高い相関性を示すことが確認できた。
同システムを用いて、ワクチン接種歴のない感染後回復者と非感染のワクチン2回接種者の抗体量を比較したところ、感染後回復者はヌクレオカプシドタンパク質の抗体ができていたが、ワクチン接種者はできていなかった。一方、スパイクタンパク質に対する抗体は、どちらも確認できた。抗体量は変異が進行するほど減少するが、ワクチン接種により、変異株に対応する抗体がある程度形成されることが分かった。
また、3回目のワクチン接種前後で、変異株に対するスパイクタンパク質の抗体量を調べた。その結果、3回目のワクチン接種により、減少していた抗体量が増えることが示された。
今回、実用的なシステムの開発に成功したことで、抗体価の迅速な精密検査が可能になった。個人のワクチン接種の適正な時期や、有効性の判断にも役立つことが期待される。
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