名古屋大学は、深紫外線LED照射によるウイルス不活化特性を活用し、新型コロナウイルスを不活化する卓上型エアカーテン装置を開発した。エアカーテン気流で感染性飛沫を遮り、気流も常にウイルスのない状態に保つことができる。
名古屋大学は2022年5月18日、深紫外線LED照射によるウイルス不活化特性を活用し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を不活化する卓上型エアカーテン装置を開発したと発表した。エアカーテン気流で感染性飛沫を遮り、気流も常にウイルスのない状態に保つことができる。名古屋医療センター、アポロ技研、フジプリグループ、アイディーネットと共同で研究開発した。
→特設サイト「新型コロナウイルス 製造業が直面する未曾有の試練」
エアカーテンは、ノズルから空気を噴出して生成する、カーテン状の気流のこと。人体が放出するエアロゾルを、空間的に遮断する効果が高いとされる。一方で、周囲の静止空気を連行するため、急速に拡散して崩壊するという課題がある。
今回開発した卓上型エアカーテンは、後端を切断した切断翼をノズル内部に搭載。気流のブースト効果を起こし、エアカーテン気流の持続力を高めた。同時に、その距離を延ばすことにも成功した。
疑似呼気発生装置を用いてエアロゾル遮断効果を検証したところ、エアカーテン装置を作動した場合は気流によりエアロゾルが遮断されることが分かった。採血時を想定し、エアカーテン気流を横切るように腕を配置させた場合でも、気流が崩壊せず、エアロゾルの遮断効果を確認できた。
また、使用したエアカーテン気流に含まれるウイルスを除去するため、波長280nmの深紫外線LEDを照射するウイルス不活化装置も新たに開発。SARS-CoV-2ウイルスを用いた実験では、検出限界までウイルスを不活化することに成功した。
この装置は、従来の空気清浄機と異なり、HEPAフィルターを使用しないことから、送風機の小型化や騒音低減につながる。メンテナンス間隔はLEDの寿命に相当する1万時間以上となるため、長期連続稼働が可能だ。
新型コロナウイルス感染症の対策として対人距離の確保が求められているが、医療現場では十分に距離を取るのが難しい状況も多い。今回開発したエアカーテン装置とウイルス不活化装置を併装したシステムは、病院やクリニック、商業施設、事業施設、教育施設などでも有用と考えられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.