東京大学医科学研究所は、小型、高出力の深紫外発光ダイオード(DUV-LED)照射光源を開発した。高出力DUV-LEDが、液体中とエアロゾル中の新型コロナウイルスを迅速に不活性化することを実証した。
東京大学医科学研究所は2022年3月18日、発光波長265nm帯のシングルチップ小型深紫外発光ダイオード(DUV-LED)照射光源を開発したと発表した。高出力DUV-LEDが、液体中とエアロゾル中の新型コロナウイルスを迅速に不活性化することを実証した。情報通信研究機構との共同研究による成果だ。
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開発したLED照射光源は、波長265nmを発光ピークとする窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系DUV-LEDだ。従来のAlGaN系DUV-LEDの問題点だった光取り出し効率を改善するため、窒化アルミニウム基板上LEDに対するナノフォトニック光取り出し技術を応用して、シングルチップLEDあたりの光出力を増加させた。その結果、従来製品の約10倍となる、500mW超の高出力が可能となった。
このDUV-LED照射光源を用いて、液体中の新型コロナウイルスに対する不活性効果を評価した。ウイルスが浮遊している液体(懸濁液)にDUV-LED光を照射したところ、ウイルスの感染力は照射0.387秒後に10万分の1まで減少した。
また、エアロゾル化した新型コロナウイルスに対しては、DUV-LED照射0.019秒後に1000分の1に減少した。
ウイルスの99.9%を不活性化するために必要な積算光量(D99.9)は、新型コロナウイルス懸濁液で9.02mJ/cm2、エアロゾルで1.04mJ/cm2だった。DUV-LED照射による不活性化効果は、エアロゾルに対する方が液体に対するよりも約9倍高かった。
エアロゾル感染は新型コロナ感染症の感染経路の1つだが、エタノールなどの液体薬剤が有効ではないため、感染対策に課題があった。今回の研究成果により、500mWの高出力で照射が可能になったことで、低コスト、高効率に物体表面の殺菌に利用できる。空気清浄機やエアコンに組み込めば、エアロゾル中の新型コロナウイルスを迅速に不活性化し、感染拡大防止や公衆衛生向上が期待できるとしている。
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