東京大学は、植物性ポリフェノールと銀イオンから、付着性および抗菌、抗ウイルス性を両立する無色透明のナノコーティングを開発した。繊維などのさまざまな素材をコーティングでき、洗濯後もコーティングは維持する。
東京大学は2022年2月8日、植物性ポリフェノールと銀イオンから、付着性および抗菌、抗ウイルス性を両立する無色透明のナノコーティングを開発したと発表した。繊維などのさまざまな素材をコーティングでき、洗濯しても剥がれず効果が持続する。
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植物性ポリフェノールの1種であるタンニン酸は、多様な材料の表面に高い吸着性を示を示す。さらに、適度な濃度の金属イオンと共存すると、物体表面に金属−ポリフェノール錯体から成る被膜を形成できる。
今回、タンニン酸に添加する金属イオンを検討したところ、銀イオンを用いて生成したコーティングで優れた付着性と抗菌、抗ウイルス性を確認できた。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と類似の構造を持つエンベロープウイルス、大腸菌、黄色ブドウ球菌を用いた実験では、抗ウイルス性を確認できた。
この銀−タンニン酸複合膜は、タンニン酸単体や銅、鉄などの他の金属と複合化させた場合に比べ、ウイルスの感染価を100分の1以下に抑えられた。また、衣服へのコーティングにより、消臭効果も認められた。
銀−タンニン酸によるコーティングは、絹、綿、ポリエステルの各繊維上で厚さ約10nmの皮膜を形成し、洗濯しても剥がれ落ちないことが確認できた。浸漬法やスプレー法により、繊維以外のさまざまな材料にもコーティングできる。
安全な材料、簡便な塗装工程のため、今後、さまざまな材料表面に抗菌性、抗ウイルス性を付与する手法として活用が期待される。
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