以上検討したことを、図5右図のモデルに反映することにより、図11のランドリーの振動モデリングが実現する。振動的には1自由度系であるが(固有振動数は1つのみ)、座標系としてはx、y、z1、z2の4つとなる。
図11を運動方程式として書き下すと、
となる。すなわち、4つの座標系に関して4つの方程式が成り立ち、解くことができる。図12に上式を「Modelicaスクリプト」で表現したものを示す。なお、1Dモデリング言語である「Modelica」については、今後の連載で詳しく紹介する。
図12の赤字部分が計算に用いたばね定数、減衰定数である。ゴム要素に関しては、既に述べたように実験などで求めた値から等価な剛性と減衰特性を予測した。また、定格回転数は1200rpmで静止状態から200秒でこの回転数まで昇速し、脱水後は、昇速の5倍の速さで減速するように設定した。なお、アンバランス量Δmは回転数によらず一定としている。
図13に、解析例として洗濯槽の振動振幅の変化を示す。系の固有振動数が3Hz程度と低いこと、減衰効果が大きいことから、共振の影響を図から読み解くことはできない。
図3で示したように、ランドリー本体が音源となり、設置された空間に音が伝搬する。ここで、音源のパワーレベルが既知であるとすると、計測点での音圧レベルは“拡散音場の理論”より、図14のように表現できる。すなわち、部屋の総表面積、部屋内壁の吸音率を指定することにより、簡単な式で予測可能である。式中のQ値は、音源の位置により決まる値(右図参照)、Lは音源と計測点の距離である。
図14の関係式を用いて、実験場(無響室)と一般家庭(洗面所)での音圧レベルを計算すると図15となる。すなわち、一般家庭では部屋の表面積が小さいこと、壁の吸音率が小さいことから、実験場での音圧レベルよりもはるかに大きい音圧レベルとなる。
次回および次々回では、2回にわたって、単3形乾電池を動力源としモーターで走行する自動車模型(例:タミヤ「ミニ四駆」)のモデリングについて考える。 (次回へ続く)
大富浩一(https://1dcae.jp/profile/)
日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.