「1Dモデリング」に関する連載。連載第1回は、いきなり1Dモデリングの話に入るのではなく、そもそもモデリングとは何なのか? について考えることから始めたい。ものづくり(設計)のプロセス、製品そのものを構成する要因を分析することにより、モデリングとは何かを明らかにしていく。
「1Dモデリング」に関する連載を始める。1DモデリングというとMBD(モデルベース開発)、1DCAEにおける現象を離散化したモデルを思い浮かべる方が多いと思う。確かにこれらも狭義の1Dモデリングであるが、例えば、システムズエンジニアリングにおける“振る舞い”(機能設計)も1Dモデリングの一つである。
連載第1回の今回は、いきなり1Dモデリングの話に入るのではなく、そもそもモデリングとは何なのか? について考えることから始めたい。ものづくり(設計)のプロセス、製品そのものを構成する要因を分析することにより、モデリングとは何かを明らかにしていく。
※)「ものづくり」の表記について:MONOistでは「モノづくり」で表記を統一していますが、本連載では「もの」と「モノ」の違いを重視していることから「ものづくり」としています。
何か新しいこと(世の中で認知が進んでいないこと)を提示する場合には、その対象を言葉で定義することから始めるのがよい。そこで、モデリングを下記のように定義する。
モデリングの定義
モデリングとは、ある設計対象について、その設計の起点から終点に至るプロセスを通して、設計対象を構成するパラメータと、これらパラメータ間の関係を、各プロセスで理解可能な形式で表現することにより、各設計結果を評価可能とするものである。なお、モデリングの結果(成果)がモデルである。
要するに、ものづくり(設計)そのものを第三者が理解可能な形式で表現し、ものづくりをもっと良く(効率的で創造的なものに)するための手段がモデリングといえる。ものづくりという一種、曖昧模糊(あいまいもこ)としたプロセスをできるだけ論理的に表現し、可視化する方法と考えることもできる。
モデリングというと機械設計の世界では、解析モデル(CAE)、形状モデル(CAD)を思い浮かべる。これらも確かにモデリングの対象であるが、後述するようにこれらはモデリングの一部である。上記のモデリングの定義で“解析可能”ではなく“評価可能”としたのは、モデリングの範囲が非常に広いことを示唆している。モデルは大きく分けると、
に分類できる。その詳細については追々お話することにする。
設計のプロセスを通してモデリングを考えてみたい。図1に設計プロセスとモデリング対象の関係を示す。設計は市場ニーズ、製品要求を入力として、種々の検討を行った結果として、製品仕様を出力する。この流れ自体が大きなモデリング対象であるが、さらにこのプロセスを通して、さまざまなモデリング対象(図1はそのごく一部)が存在する。例えば、性能、コストに関しては、コンセプト段階のあたり計算から始まって、詳細評価へと精度を高めていく。すなわち、性能のモデリング、コストのモデリングといっても設計の進捗に応じてシームレスに変化していくことになる。その意味で、モデリングとは設計という行為の中に存在する生き物のようなものである。
図1の通り、モデリングの方法は設計の進捗に合わせて、記述モデル⇒解析モデル⇒形状モデルと変化していることが分かる。例えば、文書で書かれた企画書を、ポンチ絵でイメージ化、価値分析を価値グラフ(Value Graph)で検討、機能、構造に展開、これに合わせて概略のあたり計算(性能、コストなど)を行い、材料選定、生産方式の検討を経て、詳細設計に移行する。すなわち、記述モデルでスタートするモデリング対象も順次、解析モデルで表現することを目指す。さらに、最終的な製品仕様は、仕様書、図面などとなるが、製作図面は一般には2次元図面であり、公差などの製造上の要求仕様は文章、記号などで表現される。このように、設計は多種多様なモデリングによって行われている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.