2025年2月にダッソー・システムズが発表した「3D UNIV+RSES」の構想について、元CEO(最高経営責任者)で、現在は取締役会エグゼクティブ・チェアマンを務めるベルナール・シャーレス氏が自ら説明した。
ダッソー・システムズが2025年2月に発表した「3D UNIV+RSES(3Dユニバース)」について、同社 取締役会エグゼクティブ・チェアマンのBernard Charles(ベルナール・シャーレス)氏が自ら説明するプレスラウンドテーブルが同年4月2日に開催された。
3D UNIV+RSESは、同社がこれまで実現してきた「3D」「デジタルモックアップ」「PDM」「PLM」「バーチャルツイン」「人体のバーチャルツイン」の延長線上にある次世代(第7世代)のイノベーションを担う新たなビジョンだ。
3D UNIV+RSESの中心にある「+」の文字は、その両脇の「V(バーチャル)」と「R(リアル)」を結び付け、両者の相互作用や調和によって新たな価値を創出する世界観を示している。
特に、ダッソー・システムズでは「バーチャル」という言葉を重要視しており、シャーレス氏は「『デジタル』は単なる技術的な手段にすぎないが、『バーチャル』は現実世界を“意味ある形”として再現する。バーチャルによる表現は現実世界の改善に役立つものであり、サステナブルな未来を実現する上で欠かせない考え方だ」と説明する。
3D UNIV+RSESの構想では、新しい理論、新しい数学、新しいアルゴリズム、そして新しいAI(人工知能)技術によって現実世界をより深く理解し、バーチャルで再現することを目指している。それも単なる現実世界の模倣ではなく、現実を改善するための強力なツールとして位置付けている。
「われわれは40年以上もの間、一貫して『複雑な現象を理解する力』を高めるために努力を続けてきた。3D UNIV+RSESはモノ、都市空間、人体、生命などあらゆるものの複雑な現象や特性を理解するための新たなブレークスルーを生み出す」とシャーレス氏は述べる。
3D UNIV+RSESの構想(V+R)をより現実的なものに近づけたのが、空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」の登場と、バーチャルツインを活用したAIの学習だという。
Apple Vision Proについて、シャーレス氏は「今、われわれは現実世界とバーチャル世界が同時に存在する新たな世界に突入しようとしている。これまでのフラットスクリーン越しでの体験では、われわれは“現実の外にいる囚人”のようだった。しかし、Apple Vision Proの登場によって、ようやく“内側の世界の住人”になれる」と評価する。ちなみに、ダッソー・システムズとAppleは協業を発表しており、2025年夏ごろにApple Vision Pro対応アプリケーション「3DLive」のリリースを予定している。
3DLiveは、同社のビジネスコラボレーション基盤である「3DEXPERIENCEプラットフォーム」上で作成された現実さながらのバーチャルツインを目の前の空間に展開し、リアルタイムの可視化やチーム間でのコラボレーションなどを実現するアプリケーションだ。現実世界の物理的な挙動とバーチャルツインとのシームレスな連携/相互作用も可能で、設計、解析、製造、工場の運用、トレーニングなどあらゆるシーンでの活用が見込まれる。いわば、3D UNIV+RSESの世界観を没入体験できるアプリケーションといえる。「3D UNIV+RSESは未来の中心的存在となる。現場に行くことなく、今いる場所で学び、検証し、発見することができる」とシャーレス氏は説明する。
バーチャルツインを活用したAIの学習に関しては「通常、AIの学習には大量の実データが必要だといわれるが、高品質なバーチャルツインさえあれば問題ない。そこから学習し、高精度なナレッジとノウハウを得ることができる」とシャーレス氏は説明する。先進的な顧客の中には、製品や工場だけでなく、組織そのものをバーチャルツインで構築し、プロジェクト管理などに役立てている企業もあるという。そうした企業は「AIからナレッジや学びなどを瞬時に獲得し、競争力の強化に役立てている」(シャーレス氏)という。
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