ワイブル解析からFMEA、DFMEAへ 故障を未然に防ぐ信頼性設計の基本若手エンジニアのための機械設計入門(16)(1/3 ページ)

3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、アナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第16回は、前回解説したワイブル解析で得た故障傾向をFMEA/DFMEAへどう展開し、設計改善やCAE検証につなげるか、その基本的な流れを整理する。

» 2026年05月11日 08時00分 公開

 前回説明した通り、「ワイブル解析」によって寿命のばらつきや故障の傾向を捉えることができます。

 しかし重要なのは、その結果を読み取ることだけではなく、設計にどう反映するかです。解析はあくまで現象を把握するための出発点です。設計者に求められるのは、その結果から「なぜその寿命になるのか」を考え、構造を見直していくことです。

 そこで重要になるのが「信頼性設計法」です。信頼性設計とは、故障を未然に防ぐために設計段階でリスクを洗い出し、対策を組み込む考え方です。壊れてから対応するのではなく、壊れ方をあらかじめ想定し、設計でつぶしていくアプローチです。

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信頼性設計の出発点は「故障は起き得る」という前提

 信頼性設計を考える上で重要なのは、「故障は起き得る」という前提に立つことです。完全に壊れない製品は存在しません。そのため設計者は、

  • どこが壊れるのか
  • なぜ壊れるのか
  • どの条件で壊れるのか

を事前に考え、その原因を設計段階で取り除く必要があります。ここで重要なのは、経験や勘ではなく、データに基づいて考えることです。ワイブル解析はその出発点となります。

信頼性設計の基本ステップ

故障の傾向を把握する

 ワイブル解析により故障の傾向を把握します。β>1であれば摩耗/劣化型であり、設計要因に依存する故障であることが分かります。ここでは「寿命」ではなく「壊れ方」を理解することが重要です。

FMEA(故障モード影響解析)

 次に行うのが「FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)」です。FMEAは、故障モードとその影響を体系的に整理し、リスクの優先順位を決める手法です。初めて学ぶ方は、「壊れそうな箇所を事前に洗い出す設計レビューの仕組み」と捉えると理解しやすいでしょう。

 FMEAの基本構成は以下の通りです。

  • 故障モード(どのように壊れるか)
  • 故障影響(何が起きるか)
  • 原因(なぜ起きるか)
  • 評価(S/O/D)
  • 対策

 ここでのポイントは、「現象を網羅的に整理すること」です。

例:ベアリングのFMEA

 表1は、ベアリングにおける代表的な故障を整理したFMEAの一例です。

機能 故障モード 故障影響 原因 S O D RPN 対策
回転支持 摩耗 精度低下 面圧過大 8 6 5 240 接触面積拡大
回転支持 焼き付き 回転停止 潤滑不足 10 4 6 240 給脂改善
荷重支持 疲労破壊 異音/破損 偏荷重 9 5 5 225 芯ずれ対策
潤滑維持 潤滑切れ 摩耗促進 シール不良 8 5 4 160 シール改善
環境耐性 異物混入 損傷 防塵不足 7 6 4 168 防塵構造追加
表1 例:ベアリングのFMEA

 FMEAの本質は、「故障を網羅的に洗い出し、どの故障が問題になるのかを整理した上で、リスクの優先順位を決めること」にあります。重要なのは、設計改善に直結させることももちろんですが、その前段として、どの故障が問題になるのかを整理することです。

1.機能ベースで整理されている意味

 このFMEAでは、以下のように機能ごとに整理しています。

  • 回転支持
  • 荷重支持
  • 潤滑維持
  • 環境耐性

 FMEAでは、単純に部品単位で並べるよりも、機能単位で整理した方が抜け漏れが少なくなります。

 例えばベアリングは、

  • 回転する
  • 荷重を支える
  • 摩擦を低減する

といった複数の役割を持っています。

 つまり、機能ごとに壊れ方を考えることで、網羅性が担保されるのです。

2.故障モードの捉え方

 FMEAにおける故障モードとは、故障がどのような形で現れるかを示すものです。

 例えば、

  • 摩耗
  • 焼き付き
  • 疲労破壊
  • 異物混入

といったものが該当します。

 ここでのポイントは、細かく分け過ぎず、現象として整理することです。

 FMEAの段階では、「摩耗の詳細なメカニズム」や「応力状態」まで掘り下げる必要はありません。まずは何が起きるかを広く拾うことが目的です。

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