1Dモデリングとは? モデリングをさまざまな視点から捉えることで考える1Dモデリングの勘所(2)(1/2 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第2回は、モデリングをその表現方法から2種類の“3つのモデリング”に分けて考える。次に1Dモデリングが必要となる背景について、1DCAEとMBDという2つの製品開発の考え方を紹介し、これらと1Dモデリングの関係を示す。さらに、リバース1DCAEと1DCAEを通して、より具体的に1Dモデリングのイメージを明らかにする。以上を通して、最後に“1Dモデリングとは”について考察する。

» 2021年12月21日 10時00分 公開

 連載第1回では、モデリングを製品開発の視点から紹介し、さまざまなモデリングが存在することを示した。

 今回は、モデリングをその表現方法から2種類の“3つのモデリング”に分けて考える。次に「1Dモデリング」が必要となる背景について、「1DCAE」と「MBD(モデルベース開発)」という2つの製品開発の考え方を紹介し、これらと1Dモデリングの関係を示す。さらに、「リバース1DCAE」と1DCAEを通して、より具体的に1Dモデリングのイメージを明らかにする。以上を通して、最後に“1Dモデリングとは”について考察する。

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3つのモデリング

 モデリングは、図1に示すように2種類の“3つのモデリング(モデル)”から構成される。

2種類の“3つのモデリング” 図1 2種類の“3つのモデリング”[クリックで拡大]

 1つは、次元による分類である。0Dモデル1Dモデル3Dモデルのような分類を意味し、いわゆる3D-CAE(時間と空間に関する偏微分方程式を数値的に解けるようにしたモデル)は3Dモデル、3D-CAEを縮退する(次元を下げる)ことによって、または最初から離散系で定義した時間に関する常微分方程式を1Dモデルと呼ぶ場合が多い。0Dモデルについては、時空間によらないモデルだとここでは定義しておく。

 もう1つの種類は、モデルの表現方法あるいは目的による分類で、記述モデル解析モデル形状モデルに分けることができる。記述モデルは連載第1回の価値のモデリングで使用したQFD(品質機能展開)、理論式、ブロック線図、言葉による表現などに相当する。解析モデルは具体的に数値として評価できるモデルのことで、形状モデルは形状に関する情報を有するモデルを意味し、3D-CADはその最終到達形である。

 図2に示す振動を例に、3つのモデリングを具体的に説明する。中央に記述したのは梁(はり)の振動を支配する偏微分方程式である。

振動を例にした3つのモデリング 図2 振動を例にした3つのモデリング[クリックで拡大]

 これをそのまま形状として表現したものおよび数値的に解くために作成したモデルが3Dモデルであり、形状モデルとしての3D-CADと解析モデルとしての3D-CAEに分かれる。一方、偏微分方程式にある仮定を設けて、等価質量、等価剛性を定義し、時間に関する常微分方程式に変換したものが1Dモデルであり、解析的または数値的に解くことができる。そして、偏微分方程式をある理想化された条件の下で、理論的に固有振動数を式で表現したものが0Dモデルであり、式としては解析モデル、言葉で表現すると記述モデルとなる。

1DCAEとMBD

 1Dモデリングが必要となる背景について、1DCAEおよびMBDを通して説明する。まず、1DCAEは言葉で表現すると以下となる。

1DCAEとは上流段階から適用可能な設計支援の考え方、手法、ツールであり、1Dは特に一次元であることを意味しているわけではなく、物事の本質を的確に捉え、見通しの良い形式でシンプルに表現することを意味する。1DCAEにより、設計の上流から下流までCAEで評価可能となる。ここでのCAEはいわゆるシミュレーションだけでなく、本来の“Computer Aided Engineering”を意味する。1DCAEでは、製品設計を行うに当たって(形を作る前に)機能ベースで対象とする製品全体(もの・人・場)を漏れなく表現し、評価解析可能とすることにより、製品開発上流段階での全体適正設計を実現する。

 一方、MBDの定義は平野豊氏(Woven Planet Holdings/Modelica Association)によると以下となる。

システム開発では、要求仕様を定義した後、実際のシステムを設計し、動作や効果を確認する検証プロセスに移る。システム開発において、モノを作った後に不具合が発覚し、開発が手戻りするのを防ぐには、あらかじめ、システムの挙動を数理的に記述したモデルを作成しておき、モデルによるシミュレーションでシステムや部品の挙動を予測・確認しておくことが有効である。このような開発手法をモデルベース開発MBD:Model Based Development)と呼ぶ。MBDで使用されるシステム全体のモデルとしては、集中定数系の微分方程式で動的な挙動を記述するモデルが使用される。これらのモデルを1Dモデル、シミュレーションツールを1D-CAEと呼ぶ。一方、3次元形状に基づく有限要素法モデルは3Dモデル、シミュレーションツールは3D-CAEと呼ばれる。一般に、1D-CAEによるシステム全体の仕様・動作検証を行った後、3D-CAEによる各部品の詳細設計を進めることが推奨される。

 1DCAE、MBDと1Dモデリングの関係を図3に示す。

1DCAE、MBDと1Dモデリング 図3 1DCAE、MBDと1Dモデリング[クリックで拡大]

 1DCAEは機能を起点に0D⇒1Dと考えるの対し、MBDはシステム設計にメカ設計を取り込むために3D⇒1Dという手順を経るということで、その背景、目的は必ずしも同じではない。しかし、いずれも1D-CAE、すなわち1Dモデリングがその心臓部である点で一致している。

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