1DCAEのプロセスを通して、モデリングがどのように行われ、製品開発に生かされているかを説明する。図4に示すように1DCAEは通常、リバース1DCAEと1DCAEの2つのプロセスに分けることができる。
リバース1DCAEは現象の理解、設計ノウハウの蓄積を主眼に置いている。現物を理解し、そこに潜んでいる現象を解釈することにより、現物(3D)から縮退した構造1Dモデルを作成する。この際、3D-CAD、3D-CAEのデータ、結果も参考にする。従って、構造1Dモデルでは、陰に形状情報が3Dモデルから踏襲される。次に、構造1Dモデルも参考に、機能表現した機能1Dモデルを作成する。機能1Dモデルは形状に依存しない“狭義の1Dモデル”である。さらに、原理に立ち返った原理モデルが0Dモデルである。1DCAEでは、原理モデル(0Dモデル)を起点に、アイデアを実現することを目的とし、0D⇒機能1D⇒構造1D⇒3Dとアイデアを具体化、具現化していく。このプロセスでも新機能モデル、新構造モデルを作成する。
以上の考察を踏まえて、1Dモデリングを図5のように分類することにする。しかし、これらのモデルはいきなり導出されるわけではなく、3Dモデルも含めた大きな流れの中から生まれる種類のものであることを忘れてはならない。
図6を用いて、“1Dモデリングとは”について考える。0D、1D、3Dの関係、そこで必要となる技術、違った視点でのモデルの種類を記述してみた。
図2の偏微分方程式そのものは0Dの記述モデル、これを有限要素にして解析可能としたのが3D-CAEと呼んでいる3Dの解析モデル、等価質量、等価剛性を定義して離散系モデルで表現したのが1Dモデル、理論式が0Dモデルといえる。図6中の0Dにおける理論、3Dにおける実体はいわゆる現実世界(Physical World)で、その他は仮想世界(Cyber World)と考えることができる。1Dモデリングは0Dの理論を用いて行われる場合もあり、3Dの実体を用いて行われる場合もあり、いずれの場合も、現実世界を仮想世界に取り込むのが1Dモデリングであると考えることもできる。
また、3Dの形状モデル、解析モデルを基に1Dモデリングを行う方法が“モデル低次元化”で、ROM(Reduced Order Model)、MOR(Model Order Reduction)など、その成り立ちによっていくつもその手順が提案されている。さらに、“モデル生成”に関しても、データ同化、デジタルツインなどの考え方、方法が存在する。図6中のピンク色の文字は現在注目を浴びている手法、緑色の文字は現在研究中もしくは今後その重要性が高まると予想される考え方を示している。
おそらく、ROM、MOR、データ同化、デジタルツインなどのワードに興味を持ち、その実態を知りたいと思う読者も多いだろう。これらは図6に示した大きい流れの中である目的を実現するための手段である。すなわち、何をやりたいのかが最初にあり、次に、これを実現するための手段として、どれを採用すればいいのかと考えることが重要である。場合によっては、ある目的を達成するために、複数の手段が必要かもしれないし、新たな手法を開発する必要があるかもしれない。この分野における種々のワードに関しては、その背景、内容、得意な点、不得手な点も含めて、順次、本連載で解説していく予定である。
次回は、0Dモデリングとして、理論に基づく解の事例とその効果、指標により目指すべき方向を明確にすることの重要性について解説する。 (次回へ続く)
大富浩一(https://1dcae.jp/profile/)
日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。
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