「1Dモデリング」に関する連載。今回(連載第9回)と次回の2回にわたって、タミヤの「ミニ四駆」を題材に電気自動車(EV)のモデリングを考える。まず、ミニ四駆の仕組みを説明した後、その機能と構造について考える。続いて、ミニ四駆の構成要素であるバッテリー、モーター、ギア、走行系に関してその原理を理解し、定式化を行う。
今回と次回の2回にわたって、タミヤの「ミニ四駆」のモデリングを取り上げる。電気自動車(EV:Electric Vehicle)のモデリングを考える上で、基本的な構成が同じであるミニ四駆はとても良い題材といえる。
今回は、ミニ四駆の仕組みを説明した後、その機能と構造について考える。続いて、ミニ四駆の構成要素であるバッテリー、モーター、ギア、走行系に関してその原理を理解し、定式化を行う。なお、ミニ四駆はタミヤが販売している動力付き小型自動車模型の総称である。
※注:「ミニ四駆」は株式会社タミヤの登録商標です。
図1にミニ四駆の動作原理を示す。電源としてはバッテリー(使い切りの一次電池または充電可能な二次電池)を使用し、バッテリーでモーターを動かすことで、トルクを発生させる。モーターのトルクはギアを介してタイヤに伝達され、ミニ四駆本体が走行する。
この基本機能は、EVでもおおむね同じであるといえる。もちろん、EVの方が多機能で、構造的にも複雑であることは言うまでもなく、EVの場合、減速時のエネルギーを電力に変える回生ブレーキのような仕組みなどを備えている。
図2にミニ四駆の構造を示す。バッテリー⇒モーター⇒ギア⇒タイヤ⇒本体と図1に示した流れで構造が連結されている。特に、トルク伝達を担うギアが部品数も多く、構造を複雑にしている。
ギアは(1)モーター軸から(4)後輪軸、(8)前輪軸と順番通りに連結されている。ギアの記述にある「I」は入力(Input)、「O」は出力(Output)を意味する。各ギアは歯数がそれぞれ異なっており、これをうまく設定することにより、所定のトルクを所定の方向に伝達することを可能としている。このミニ四駆は前輪、後輪ともモーターで駆動されているのでいわゆる四輪駆動である。
図3にミニ四駆の「機能構造マップ」を示す。構造に関しては、実際のミニ四駆の部品をもらさず記載しているのでかなり要素数が多いが、本体⇒主要素⇒サブ要素⇒部品というように見れば、構造は理解できるものと思う。一方、機能は図1の動作原理を基に、主機能として動力を作る、動力を伝える、動かすとして、さらにサブ機能に展開している。
以下、主要要素のバッテリー、モーター、ギア、走行系のモデリング法について述べる。
図4にバッテリーのモデリングの全体像を示す。ここではバッテリーとして二次電池(充電池)を想定する。バッテリーではその状態を示すものとして、残存容量(RC:Remaining Charge)と満充電時の容量(FCC:Full Charge Capacity)の比として充電率(SOC:State Of Charge)を用いる。
FCCはいわゆる電池電力容量(Wtotal)で、単3アルカリ一次電池では1Wh程度である。RCはバッテリーの使用に伴い減少し、
で定義できる。Vb0は満充電時の開回路電圧でミニ四駆では3Vである。一方、バッテリーには内部抵抗があり、電気回路で示すと図4の左下のようになる。RBが内部抵抗、VOCVが開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)、VBがバッテリー端子電圧、Iが電流で、この関係式が、
となる。このように、開回路電圧VOCVは、充電率SOCの関数となる。図4の右下にVOCV(SOC)の例を示す。この特性はバッテリーの種類、使用状況などにより異なってくるが、満充電時には“SOC=1”で、使用に伴い開回路電圧が低下する。これはこの特性が事前に分かっていると、開回路電圧を測定することにより、バッテリーの残存容量(充電率)が予測できることを意味する。
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