体質改善を進める自動車メーカーの前に、資材価格のかつてない高騰が立ちはだかる自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

» 2022年05月14日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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 決算資料では営業利益の増減要因に触れられていますが、それを見ると資材や原材料など製造にかかわるコストが2021年度から2022年度で大幅に増えていることが分かります。トヨタ自動車が毎年徹底した原価改善を続けているのは周知の通りですが、それを大幅に上回る資材高騰によって原価改善で利益を生み出すのが難しくなっています。トヨタ自動車は2022年度は3000億円の原価改善を進める計画ですが、資材高騰の影響は1兆4500億円を見込んでいます。足し引きして1兆1500億円の減益要因です。

 他の材料に置き換えられないか、材料の使用量を減らせないか、各社とも検討を続ける方針ですが、飛び道具は簡単には出てきません。とはいえ、各社とも新車価格にコストを反映することには慎重です。原材料のコストが上がったから価格を上げるのではなく、ふさわしい付加価値を持たせた上で見合った価格にしたい……という思いが、決算会見に出席した経営陣からうかがえます。

2022年度の投資計画と原価改善
2022年度 2021年度 2022年度
設備投資 研究開発費 資材コスト 原価改善 資材コスト 原価改善
トヨタ 14,000 11,300 -6,400 2,800 -14,500 3,000
4.2 0.5
ホンダ 5,000 8,400 -2,700 - -3,000 -
79.6 4.5 569億円の減益 860億円の減益。△3000億円には輸送費や人件費も含む
日産 4,400 5,500 -1,392 276 -2,570 3,000
27.5 13.6 「モノづくりパフォーマンス」 原材料費で△2120億円、物流費で△450億円 販売、生産併せた改善
スズキ 2,900 2,000 -1,283 292 -850 350
53.1 24.4
マツダ 1,200 1,400 -950 - -1,200 -
-16.8 4.0 コスト改善含め594億円の減益 原材料と半導体で△900億円、物流コストで△300億円。原価改善加味して728億円の減益
スバル 1,400 1,200 -796 71 -1,042 55
62.6 5.4
三菱自 1,000 1,020 -598 524 -792 300
59.4 12.4 さらに輸送費で△18億円 工場経費で△77億円、輸送費で△155億円
原価改善や資材コストは各社の営業利益の増減要因より抜粋。金額の単位は億円。設備投資と研究開発費の下段は前年度比で単位は%。

 厳しい事業環境ではありますが、設備投資や研究開発費はゆるめません。ホンダは北米向けの新型車投入が続くことから前年度から8割増となります。2022年度の設備投資ではありませんが、SUBARU(スバル)は国内の生産体制の再編に2023年度から5年間で2500億円を投資すると発表しました。通常の投資に加えて、電動車の生産体制を整えるために投資を実施します。

 決算会見ラッシュの中で印象的だったのは、ある自動車メーカーの経営陣の「半導体不足もコロナ禍と同じ」という発言です。先の読めない非常事態続きでも、その中でできることをやって活動していくしかない、というニュアンスを感じました。

→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら

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