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» 2022年05月09日 06時00分 公開

勝ち残るためのCASEを超えて、社会コストを低減する「全体最適」への協力をグリーンモビリティの本質(3)(1/3 ページ)

本章では、社会コストの低減に向けた全体最適の実現の考え方と最新トレンドの見立てを紹介する。

[早瀬 慶(EY ストラテジー・アンド・コンサルティング),MONOist]

 前章では、「自社だけが勝てばよい」という戦略ではなく、「社会平和」を実現する視野が必要であり、そのコアとなる概念の「グリーンモビリティ」の定義と必要性を論じた。本章では、社会コストの低減に向けた全体最適の実現の考え方と最新トレンドの見立てを紹介する。

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 社会全体のコストを真に低減するためには全体最適を実現しなければならないが、その構造を理解するためには幾つかの重要な視点がある。その1つが、部分最適の積み重ねによって結果的にある領域にしわ寄せが発生し、社会問題にまで発展するパターンだ。

 この根底にあるのは、あるプロセスや、ある事業者、業界にとっては“全体最適のつもり”である思い込みだ。しかし、当該プロセス以外や、他社、他業界が見えていないことは、社会全体の真の最適とはいえない。つまり、効果ゼロというばかりか、見えない部分や相対的に弱い領域にマイナスが寄せられることにつながる。

 分かりやすい例は、近年特にドライバー不足が注目されている物流の領域である。輸送業者や倉庫事業者、荷主、3PL(third party logistics、荷主企業に代わって最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築を提案し、それを包括的に受託、実行すること)、業界や地域などで取り組むサプライチェーンの効率化は、物流全体の中の一部分の個別最適にしかなっていない。

 そのしわ寄せが、長時間労働に加えて、荷積、荷下ろし、事務処理など運転以外の業務負荷という形でトラックドライバーに集中し、現場の疲弊が社会問題として表層化しているのである。これは日本に限らずグローバルレベルの社会課題であり、カーボンニュートラルやモビリティトレンドの進展と合わせて業界の枠を超えて対峙(たいじ)すべきテーマとなっている。

業界を超えて、部分最適から全体最適へ[クリックで拡大] 出所:EY ストラテジー・アンド・コンサルティング

 これに対し、経済産業省が推進する日本版「物流MaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)」での社会コスト低減の考え方は、業界横断やプロセス横断の視点だけではなく、「複数輸送手段をシームレスに」「需要を束ねて」「効率的に運ぶ」ということを柱とする。

 例えば、この「効率的に」の部分は、CO2削減などいわゆるカーボンニュートラル対応も含まれる。時間や労力だけでなく、エネルギーや排出物なども含めて社会や地球への負担を最小化する、という目的が含まれる。その観点では商用車メーカーなどモノづくりのプレイヤーが貢献できる余地があり、輸配送事業者や荷主、倉庫事業者だけでなく業界や領域を横断して取り組むことができる。裏を返せば、真の社会コスト低減を目指すのであれば、1つの事業者、1つの業界、1つの地域では実現できず、横断的に全体最適を志向するエコシステムを構築せざるを得ない。

物流の最適化に必要な観点と、その課題[クリックで拡大] 出所:EY ストラテジー・アンド・コンサルティング
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