機械式駐車場からエンドツーエンドまで、ボッシュが日本で取り組むAI開発自動運転技術(1/2 ページ)

Robert Boschの日本法人ボッシュは2024年、横浜市都筑区に新本社を開設した。複数の拠点に点在していた従業員を集約するとともに、研究開発設備を拡充。日本の取引先のニーズに対応した開発を強化している。

» 2025年07月23日 07時30分 公開
[齊藤由希MONOist]

 Robert Boschの日本法人ボッシュは2024年、横浜市都筑区に新本社を開設した。複数の拠点に点在していた従業員を集約するとともに、研究開発設備を拡充。日本の取引先のニーズに対応した開発を強化している。

 その一例が自動運転技術だ。1つの拠点に従業員が集まることで、AI(人工知能)と車両の制御系のように異なる分野同士でやりとりしやすくなった。日本特有の需要や走行環境を踏まえて、日本主導での開発を推進していく。

少し憂鬱な機械式駐車場の出し入れ

 駐車時の運転操作のアシスト自体は珍しくないが、ボッシュは日本に特に多い機械式駐車場への入出庫に対応したシステム「パレットガレージアシストシステム」を開発中だ。白線でスペースが区切られた駐車場に比べて機械式のパレットは左右の余裕が少なく、失敗してパレットに接触すればタイヤやホイールなどにダメージとなる。

 ドライバーには慎重な運転操作が要求されるが、自宅や勤務先が機械式駐車場の場合、こうした運転が日常的に必要になる。狭い場所で荷物を出し入れしなければならない他、鍵など小さなものをパレットの隙間に落とす可能性もあるなど、ストレスにつながる。

 「機械式駐車場の困りごとは米国など他の地域の人にはイメージしてもらいにくい。一方で、欧州の大都市ではスペースが1台分しかないカツカツのところで駐車しなければならないが、日本ではそのような縦列駐車の機会はあまりない。それぞれの市場に困る場面があり、地域発でやっていこうということになった」(ボッシュの担当者)

 ボッシュの駐車アシスト技術は白線のある縦列/並列駐車を基本に、都市部の狭い路上駐車のスペースや機械式駐車場などタイトな条件にも対応している。残るは戸建て住宅の駐車場だ。駐車スペースが非常に狭かったり、自転車を置くために片側ギリギリまで寄せなければならなかったり、世界中にさまざまなパターンがある。こうした多様な駐車環境にも対応していく方針だ。

ボッシュのパレットガレージアシスト[クリックで再生] 出所:ボッシュ

CNNを活用して精度向上

 ボッシュが開発中のシステムはカメラによって機械式駐車場のスペースを検知し、ドライバーが駐車を指示するとステアリング/アクセル/ブレーキを全て自動で制御する。ドライバーがステアリングを操作すると制御は中断されるが、ブレーキペダルをドライバーが操作した場合はそれに合わせて駐車時の速度を調整できる。システム作動中は運転席にいる必要はなく、スマートフォンやタブレット端末による遠隔操作での入出庫も可能だ。

 周囲の人や障害物などを検知するため開発車両にはカメラ4つと超音波センサー12個を搭載しているが、センサー類の統合処理を行うことなくカメラ1つでも機能を実現できるという(ADASを進化、充実させる傾向を踏まえれば、今後の新型車がカメラを1つしか搭載しないことは考えにくい)。

 開発車両の場合は、ボッシュ新本社の地下にある機械式駐車場のパレットに対して片側3cmほどの余裕しかない。CNN(畳み込みニューラルネットワーク)を活用した画像認識技術により、パレットのスペースを高精度に検出。それに合わせて車両を緻密に制御する。「初めはCNNを使っていなかったが、精度が担保できないのが課題だった。機械式駐車場のさまざまなパレットのデータを学習させることで精度を確保する」(ボッシュの担当者)。

 画像処理は全て車両側で行い、クラウドとは連携しない。センチメートル単位での車両のコントロールは、機械式に限らず狭い駐車場でのアシストに応用できるとしている。

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