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» 2021年12月28日 06時00分 公開

2020年以上に大変だった、コロナ禍2年目の自動車業界を振り返るいまさら聞けない自動車業界用語(19)(1/3 ページ)

一難去ってまた一難、2020年以上に苦しくなった1年でした。自動車業界では一体何が起きていたのか。実際の現場視点で、この1年をまとめます。

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今回の記事では激動の2021年の自動車業界を振り返ります。


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 コロナ禍に見舞われた2020年は世界経済が停滞し、自動車業界もかつてないほど生産と販売が減少するなど大きな影響を受けました。2021年は挽回の年になるはず……が蓋を開けてみると、トラブル続きです。一難去ってまた一難、2020年以上に苦しくなった1年でした。自動車業界では一体何が起きていたのか。実際の現場視点で、この1年をまとめます。

半導体供給問題

 この1年間、自動車業界を悩ませ続けたのは「産業のコメ」ともいわれる半導体の供給問題でした。その発端は2020年、ロックダウン(都市封鎖)で生産や販売などの企業活動が難しくなり、自動車業界は半導体の発注をキャンセルしたことです。

 その後、2020年は中国や北米をはじめとする地域で新車生産の挽回が想定以上に進みましたが、自動車業界の発注キャンセルの影響は巡り巡って、巣ごもり需要で半導体のニーズが増加する他の産業と生産能力の奪い合いになりました。半導体の生産が追い付かず、必要な総量が確保できなくなったのです。

 その影響で2020年末から海外の一部の自動車メーカーで生産調整が始まり、日産自動車やホンダなど日系自動車メーカーにも2021年初めから徐々に影響が出始めました。半導体不足は自動車業界以外にも大きく影響し、安定供給に向けて国家間で増産を要請する事態にも発展しました。

 しかし、ただでさえ半導体が足りない中、生産能力がさらに減ったことで供給問題はより深刻化しました。2020年10月に旭化成エレクトロニクスの半導体製造工場(宮崎県延岡市)で火災が発生。他社での代替生産など対応を進めていましたが、カーナビゲーションシステムやカーオーディオに影響が広がりました。旭化成エレクトロニクスの製品が関わる分野だけでなく、半導体全般に供給逼迫(ひっぱく)が広がりました。

 そこに追い打ちをかけたのが、2021年3月に発生したルネサス エレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)の火災です。焼損したのは2階建ての建屋の1階部分、600m2でした。被害を受けたのは、面積にして1階のクリーンルームの5%、製造設備は全体の2%でしたが、空気の清浄度を高く保つクリーンルームがススだらけになってしまうのは大変なことです。また、全体の2%とはいえ、新たに入手するには時間のかかる設備もあり、いかに早く火災前の生産能力に戻せるか、注目が集まりました。

 那珂工場は東日本大震災でも被災しましたが、当時は生産再開まで3カ月、完全復旧まで約半年を要しました。2021年2月に米国テキサス州の大寒波による停電の影響を受けた半導体メーカーも、生産再開に1カ月、完全復旧までさらに3カ月ほどかかりました。しかし、ルネサス エレクトロニクスは2021年3月の火災から信じられないスピードで復旧を果たしました。

 その背景には、自動車メーカー各社をはじめとする非常に多くの企業の協力があります。協力し合って、復旧を支援し、生産水準はわずか3カ月で火災前の100%に回復しました。東日本大震災の教訓も生かした迅速な復旧は日本のメーカーの英知の結晶です。復旧が早かったとはいえ、半導体の供給不足が緩和されたわけではなく、2021年夏以降も自動車メーカー各社で生産調整が相次ぎました。

 国を挙げた支援や要請もあり、設備能力の増強が図られたものの、半導体の供給問題が解消するのは2022年以降にずれ込んでいます。中間在庫のない綱渡りでの供給が続いており、いつ安定した供給が可能になるのか、正確な見通しはいまだ立っていません。

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