理化学研究所は、微小溝を持つシリコーンゴム製シート上で心筋細胞を培養し、拍動組織「心筋ブリッジ」を自発的に形成することに成功した。拍動組織は自律的に拍動し、培養液を動かすポンプの働きをするという。
理化学研究所は2019年5月29日、微小溝を持つシリコーンゴム製シート上で心筋細胞を培養し、拍動組織「心筋ブリッジ」を自発的に形成させたと発表した。拍動組織は“マイクロ心臓”ともいうべき機能性を持ち、自律的に拍動し、培養液を動かすポンプの働きをするという。慶應義塾大学、スイス連邦工科大学チューリッヒ校との国際共同研究チームによる成果となる。
深さ0.1〜0.8mm、幅0.05〜0.8mmの微小な溝が刻まれたシリコーンゴム製シート上でラットの心筋細胞を7日間培養すると、心筋細胞は自発的に集まり、溝の間に橋のような大きな1つの細胞を形成した。研究チームが「心筋ブリッジ」と名づけた拍動組織は、深さが0.8mmと深すぎた場合を除き、幅約0.2mmの溝で最も多く形成した。
次に、厚さ0.05mm、長さ0.2mm、高さ0.15mmの2本のシリコーンゴム製の微小柱をシリコーンゴム製シート上に内幅0.15mmで並べて心筋細胞を培養すると、2本の微小柱をつなぐ心筋ブリッジを形成した。心筋ブリッジは自律的に拍動。拍動の力のみで微小柱は内側にたわみ、その間を満たしている培養液を押し出した。最も流れが大きくなると考えられる地点で、1回の収縮につき約0.01nL相当の培養液が移動した。
これまでに、細胞を小さな空間に閉じ込めて培養すると、細胞は通常の培養とは異なる振る舞いを示すことが明らかになっていた。本研究では、心筋ブリッジの収縮と微小構造体の組み合わせによって、培養液に含まれる生物的エネルギー源を液体の流れという機械的エネルギーに変換できることを明確にした。
今回の研究成果について、心筋細胞から心臓を形成する際の実験モデル、創薬分野における心毒性試験や薬効試験のための系、拍動そのものを利用した微小動力源としての利用が期待できるとしている。
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