産業技術総合研究所は、水に応答して薬剤を放出する新規の有機ナノカプセルを開発したと発表した。簡単に量産でき、有機溶媒に溶解あるいは分散できるものは、親水性、疎水性を問わず封入できる。
産業技術総合研究所は2016年9月13日、水に応答して薬剤を放出する新規の有機ナノカプセルを発表した。このカプセルは、乾燥状態や有機溶媒の中では安定しているが、水による刺激によって構造が変化し、内容物を放出する。
今回開発された有機ナノカプセルの製造方法は、室温でカプセル化剤(アミノ酸誘導体)と亜鉛化合物をアルコールなどの有機溶媒中で混ぜるだけだ。それにより、均一なサイズ(直径100〜150nm)のカプセルが、数時間以内に溶媒1L当たり100g以上得られる。
このカプセルを製造する時に、中に入れたい薬剤などを一緒に混ぜておくと、カプセルの内部に封入できる。また、有機溶媒に溶解あるいは分散できるものならば、親水性のものでも疎水性のものでも封入可能だ。
ろ過して溶媒と分離し、乾燥させても、カプセル構造は安定しているが、水が刺激となって内容物を放出する。カプセルを溶かす溶媒(酸性/中性/エタノール)によって放出率が異なるため、放出をコントロールすることもできる。
この有機ナノカプセルは、今後、医薬・化粧品・塗料などの分野で水応答性のカプセル材料として期待されるという。例えば、このカプセルを化粧品や制汗剤などに加えて、汗や雨水などでぬれた時に目的の香りを放出したり、自己修復物質を封入したカプセルを塗料に添加し、塗膜に傷がついて水が内部に侵入した際に、目的物質が放出され塗膜が修復されるといった機能が考えられる。
このような材料に対する需要は高く、これまでにも例えば化粧品分野において、水にぬれることで逆に皮膜を強くする技術などが開発されてきた。しかし、均一サイズのナノカプセルを製造するのには特殊な工程が必要なため量産が難しいこと、疎水性物質の封入率が低いこと、乾燥状態や有機溶媒中で不安定であるといった課題があった。今回開発されたカプセルは、これらの課題に応えるものとなっている。
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