鳥取大学は、カニ・エビ殻を原料とする極細繊維、キチンナノファイバー(キチンNF)塗布による、アトピー性皮膚炎の進行抑制効果を明らかにしたと発表した。皮膚炎の予防や薬と組み合わせた治療など、キチンNFの応用が期待される。
鳥取大学は2016年3月29日、カニ・エビ殻を原料とする極細繊維、キチンナノファイバー(キチンNF)塗布によるアトピー性皮膚炎の進行抑制効果を明らかにしたと発表した。同大学農学部の東和生助教らと工学研究科の伊福伸介准教授らの研究グループによるもので、成果はオンライン科学誌「Carbohydrate Polymers」に掲載された。
鳥取県はカニの水揚げが全国トップクラスで、廃棄物となるカニの殻の有効利用が期待されているという。キチンNFは、カニ殻の主成分であるキチンをナノファイバーとして取り出したもので、幅が約10ナノメートルの極細繊維だ。さらに、処理によって繊維の表面のみをキトサン化するといった改変も可能となっている。同研究グループはこれまでに、キチンNFが肌に対して保湿効果と傷の修復促進効果を持つことを確認している。
今回、同研究グループは、アトピー性皮膚炎モデルを用いて、キチンNFがアトピー性皮膚炎の進行を抑制することを明らかにした。キチンNF塗布により、アトピー性皮膚炎の症状の進行が抑えられ、かつ皮膚の炎症の進行も抑えられることが確認できた。
また、キチンNF塗布により、炎症などの免疫反応において中心的役割を果たす転写因子NF-κBの働きが抑制され、血液中の免疫グロブリンE(IgE)濃度を減少させた。従来のキチンにはそれらの効果は認められなかったことから、ナノファイバーという形態が皮膚のバリア機能の維持を可能にしていると考えられるという。
この成果により、キチンNFの皮膚炎への応用が期待される。具体的には、症状の悪化予防、薬からのリバウンド予防、薬と組み合わせての治療というような使用法が見込まれる。なお、この成果はモデル動物での検証結果であるため、実際の使用に向けては今後さらなる検討が必要だとしている。
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