京都大学は、細胞が本来持っている防御ネットワークを突き破って異常増殖する、がん細胞特有の性質を説明する分子機構を発見した。今後のがん治療や新たな分子標的治療の開発に貢献することが期待される。
京都大学は2017年12月20日、細胞が本来持っている防御ネットワークを突き破って異常増殖する、がん細胞特有の性質を説明する分子機構を発見したと発表した。同大学放射線生物研究センター 講師の古谷寛治氏らの研究グループが明らかにした。
がん細胞には強い増殖能力があるが、この増殖能力を生み出す原因として、PLK1と呼ばれるリン酸化酵素の機能が活発に働くことが示されてきた。一方で、正常細胞には異常な増殖を防ぐ防御ネットワークがさまざまな形で備わっており、その1つにチェックポイントと呼ばれる機構がある。一般に細胞が放射線などにさらされ、遺伝情報であるDNAに傷が生じると、DNA上の損傷を感知し細胞増殖の速度が遅くなる。
研究グループは、このチェックポイント機構がDNA上の損傷を感知できなくする「リン酸化シグナル経路」を新たに発見。がん細胞では、リン酸化シグナル経路を働かせて、DNAに傷を負っても増殖速度を維持し続けられることが明らかになった。
これにより、がん細胞が細胞の増殖を推進するだけでなく、増殖の速度を遅くするような「敵」をなぎ倒す「二刀流」で、がん増殖をし続けることが分かった。細胞が本来持っている防御ネットワークを突き破って異常増殖するという、がん細胞特有の性質を説明する分子機構の発見は、今後のがん治療や新たな分子標的治療の開発に貢献することが期待される。
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