東京大学は、高速で流れる多数の細胞を無標識で連続撮影し、それを機械学習によって分類することで、抗がん剤によって生じたがん細胞の形態変化を高精度に検出することに成功した。
東京大学は2017年9月29日、高速明視野顕微鏡を用いて、高速で流れる多数の細胞を無標識で連続撮影し、それを機械学習で分類することで、抗がん剤によって生じたがん細胞の形態変化を高精度に検出することに成功したと発表した。同大学大学院 理学系研究科 教授の合田圭介氏らの研究チームによるもので、成果は同日、英科学誌「Scientific Reports」電子版で公開された。
薬剤応答の評価技術は、細胞に蛍光標識をして解析するハイコンテント・スクリーニングが、近年注目を集めている。しかし、蛍光標識を用いる際は、試料準備に多大な時間を要し、細胞の内側の分子に標識する場合は遺伝子組み換えも必要だった。
今回発表した薬剤応答検出技術は、薬剤応答の評価を無標識でできるため、新しい薬剤スクリーニングや細胞診断の方法、データ統合生命・医科学としてのIoBMT(Internet of Bio-Medical Things)への展開が期待される。また、細胞診断への応用により、治療モニタリングなど臨床応用への展開も想定されるという。
同研究で確立したのは、抗がん剤によってがん細胞に生じた形態変化を、無標識の透過画像から高速かつ高精度に検出する技術だ。これを検証するため、乳がん由来のがん細胞(MCF-7)に抗がん剤として利用される「パクリタキセル」を異なる濃度で添加し、12時間および24時間作用させた。そして、マイクロ流体チップを用いて細胞を高速で流し(毎秒約10m)、高速明視野顕微鏡を用いて、毎秒1万細胞の高スループットでサンプル内の全細胞を撮影した。
この大量の画像を機械学習によって形態分類し、細胞の画像から500種類以上の特徴量(形や質感など)を抽出。人でも見分けの難しいわずかな形態変化を検出した。抗がん剤を作用させたがん細胞と作用させていないがん細胞については、92%の精度で区別できた。また、薬剤濃度によって分類精度が推移するという結果も得られ、同技術が細胞の薬剤応答性評価に利用できることが示された。
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