技術トップである岡野原氏は、AIを語る際に用いられる機械学習や深層学習の定義や、今後のAI関連の研究トレンドを解説した。
岡野原氏によれば、機械学習は製造業のプロセスに似ているという。製造業では、原材料を工場で加工して製品にして出荷する。一方、機械学習は、学習データを計算リソースを使って学習済みモデルにしてデバイスやサービスで利用する。「製造業と異なるのは、“出荷”した後に得られたデータが学習データとしてフィードバックされること」(同氏)だ。
その上で代表的な機械学習の手法として「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つを挙げた。教師あり学習は手とり足とり教えるもので、現在の深層学習の成功例は教師あり学習によるものがほとんどだ。一方、教師なし学習は、エンジニアリング的な成功例は少なく、今後の開発テーマになる。そして、強化学習は、教師あり学習のように手とり足とり教えないが、結果に対して良かったか悪かったかだけを教えるというもの。そして「人間の脳はこれら3つの学習を行っている」(岡野原氏)という。
これらの機械学習に対して直交する技術となるのが深層学習である。つまり深層学習は、教師あり学習、教師なし学習、強化学習の全てに適用できる。また深層学習は、ルールベース、浅い機械学習などとも対比される。タスクの学習や表現学習をデータから自動獲得するのが深層学習である。
今後の研究トレンドでは、機械学習のうち、成功例を生み出してきた教師あり学習から、半教師あり学習、教師なし学習、強化学習への移行が起こりつつあるとした。岡野原氏は「現実世界において、全てに正解のある教師データがそろっていることはまれだ。少量の教師ありデータと大量の教師なしデータから学習モデルを導き出す半教師あり学習を実現できれば、さらなる進歩が得られる」と述べる。
この他のトレンドとしては、「個別のタスク学習からメタ学習へ」「複雑なタスクの実現に向け記憶、注意機構が重要に」「実利用へ向けた手法開発」などがあるという。
こういったトレンドの中で、PFNは基礎研究だけでなく、応用研究にも力を入れている。西川氏が説明した「ITの専門家と産業の専門家による多様性」が、研究開発にも及んでいることを示す事例だ。
また岡野原氏は「機械学習のロボットへの適用で業界に先駆けているOpenAIのリサーチサイエンティストであるPieter Abbeel(ピーター・アビール)氏をPFNのテクニカルアドバイザーに迎えた」と発表し、今後も人材を充実させる方針を示した。
西川氏は「現在競合している企業はあるか」という報道陣からの質問に対して「ビジネス面はともかく、人材の取り合いと言う意味で、GoogleやFacebook、Uberなどと競合することもある。より大きな波を作り出すため、成長と多様性を生み出す人材は極めて重要だ」と述べている。
なおPFNは、1年前の2016年7月ごろの従業員数は約40人だったが、現在は約100人まで増えているという。1年で倍増しているが、今後も人材強化の方針は変わらないようだ。
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