第4次産業革命を支える「簡単でシンプルなIoT」の意義:いまさら聞けない第4次産業革命(15)(3/3 ページ)
印出さん、いろいろ簡単でシンプルなIoTパッケージを探してみたんですけど、コスト的に手軽でちょうど使いやすいものが見当たらないんですよね。本当に簡単な見える化がしたいだけなんですけど。
それなら、自分たちで汎用品を組み合わせて作ってみたらどう?
本連載の第1回「第4次産業革命って結局何なの?」でも紹介しましたが、第4次産業革命で得られるとされる仕組みはほぼ全てが「サイバーフィジカルシステム(CPS)」によって成り立っています。情報を、センサーなどで収集し、サーバなどで蓄積し、蓄積したデータを分析し、それを現実世界にフィードバックするという仕組みです。
IoT活用の基本的な仕組みとなる「CPS(サイバーフィジカルシステム)」 出典:MONOist編集部
この基本形さえ理解できていれば、実は民生品や汎用品などを組み合わせることで単純な見える化などは実現可能となります。
実際にこうした仕組みを自社内で作って成功しているケースも徐々に増えてきています。例えば、愛知県の旭鉄工では、TPS(トヨタ生産方式)のツールとして生産管理板を導入しましたが従業員の負担が大きかったといいます。そこで、自動化を計画し、自社でIoTによるシンプルな「製造ライン遠隔モニタリングシステム」を作り上げました。スマートフォンや汎用ディスプレイなどを組み合わせたシンプルなシステムで、大幅なコスト削減を実現したといいます※)。
※)関連記事:IoTは町工場でも成果が出せる、市販品を次々に活用する旭鉄工の事例
さらに旭鉄工のすごいところは、作り上げたシンプルなIoTパッケージを、自社の新たなビジネスとして販売し始めたところよ。
す、すごいですね。弊社でもとにかくトライしてみることにします。
本連載では、繰り返し第4次産業革命の動きは現在進行形で、定まった正解例がないということを強調しています。逆にこうした正解例を先に見つけ出すことができれば、自社の新たな成長のチャンスとすることができます。旭鉄工の事例はこうした第4次産業革命におけるピンチとチャンスの姿を非常によく表しているような気がしています。
さて今回は、「簡単シンプルなIoT」の意義と取り組みについてまとめてみました。次回は日本政府が3月に発表した「Connected Industries」の意味について解説したいと思います。
連載「いまさら聞けない第4次産業革命」の目次
- インダストリー4.0の地味化はいい傾向?悪い傾向?
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについてお伝えしています。第13回となる今回は、2017年4月に開催されたドイツの「ハノーバーメッセ 2017」で見えた傾向についてまとめます。
- IoTは町工場でも成果が出せる、市販品を次々に活用する旭鉄工の事例
調査会社のガートナージャパンが開催した「ガートナー・ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2017」の基調講演では、自動車部品製造の旭鉄工が登壇。「町工場でも成果の出せるIoT!〜昭和の機械も接続〜」をテーマに、初期投資が低く町工場でも簡単に使えるIoTシステム構築への取り組みについて紹介した。
- IoTのおいしい使い方「IoTレシピ」の募集をRRIが開始
経済産業省などが主導するロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)は、中堅中小製造業向けの「IoTツール&レシピ」の募集を開始する。RRIが中堅中小企業向けのIoTツールを募集するのは2016年度に続いて2度目。今回はツールと共に効果的な使い方や組み合わせを示す“レシピ”を同時募集しているのが特徴。
- インダストリー4.0がいよいよ具体化、ドイツで「実践戦略」が公開
注目を集めるドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」。この取り組みを具体化する「実践戦略」が2015年4月に示された。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。
- スマートファクトリーがいよいよ現実解へ、期待される「見える化」の先
ドイツのインダストリー4.0がきっかけとなり関心が高まった、IoTを活用したスマートファクトリー化への動きだが、2017年は現実的成果が期待される1年となりそうだ。既に多くの実証成果が発表されているが、2017年は、実導入ベースでの成功事例が生まれることが期待される。
- IoTの命運は中小製造業の手に、チャンスの前髪をつかめるか
2016年は製造業にとってIoTの活用が身近になった1年だった。しかし、その流れに取り残されていることが懸念されているのが、中小製造業である。ただ、製造業がIoTで「つながる世界」の価値を得るためには中小製造業の活用が必須である。2017年はどこまで中小製造業を巻き込めるかという点がIoTの成否を分ける。
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