マーベルは、自動運転車やコネクテッドカーに求められる、セキュリティ機能を搭載した車載イーサネット対応のスイッチIC「88Q5050」を発表した。既に先行顧客へのサンプル出荷を開始している。
マーベル(Marvell Technology Group)は2017年7月24日、自動運転車やコネクテッドカーに求められる、セキュリティ機能を搭載した車載イーサネット対応のスイッチIC「88Q5050」を発表した。既に先行顧客へのサンプル出荷を開始している。
車載システムのECU(電子制御ユニット)をつなぐ車載LANには、CANやLIN、FlexRay、CANを拡張したCAN FD(Flexible Data Rate)などが用いられている。しかし、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術、コネクテッドカーを実現していく上で、より高速な車載LANが求められるようになっている。そこで注目を集めているのが、IPネットワークとして広く利用されているイーサネットを車載用途でも利用できるようにした車載イーサネットだ。
既に車載イーサネットは、整備に用いられる診断システムや、車両の周辺の状態を複数のカメラで確認できるようにするサラウンドビューといった一部の用途で採用されている。これらの車載イーサネットの伝送速度は100Mbpsだが、今後はさらなる高速化が計画されているのだ。
車載イーサネットの規格を策定するIEEEでは、100Mbpsの100BASE-T1、1Gbpsの1000BASE-T1の仕様を発行している。今後は2019年までに、2.5Gbps/5Gbps/10GbpsというマルチGbpsの規格策定を進める計画である。また、CANなど現行の車載LANをIPネットワークに代替できる、10Mbpsと低速の車載イーサネットの規格策定も2018年をめどに進んでいる。併せて、イーサネットのリアルタイム性を確保する規格となるTSN(Time Sensitive Networking)の策定も進んでおり、車載イーサネットの本格普及に向けた準備は着々と整いつつある。
今回マーベルが発表した88Q5050は、同社として初となる車載イーサネットに対応するスイッチICである。同社 ワールドワイドビジネスデベロップメント担当 バイスプレジデントのドナ・ヤセイ(Donna Yasay)氏は「当社がこれまで提供してきた車載イーサネット対応製品はトランシーバーICだけだった。現時点で、伝送速度1Gbpsの1000BASE-T1に対応するトランシーバーICを投入できているのは当社だけだが、車載システムの“イーサネットハブ”になるゲートウェイECU向けのスイッチICがなかった。今回の88Q5050で車載イーサネットのポートフォリオがそろうことになる」と語る。
88Q5050は、1Gbps対応のトランシーバーIC「88Q2112」に採用したファブリックを採用している。外部接続インタフェースとしては、4ポートの100BASE-T1に加えて、100BASE-T1×1、100BASE-TX×1、MII/RMII/RGMMII×2、GMII×1、SGMII×1から4ポートを追加できるデジタルインタフェースも備えている。88Q5050単体では、100Mbpsの車載イーサネットのスイッチICにすぎないが、デジタルインタフェースに別途88Q2112を接続すれば、1Gbpsの1000BASE-T1も同時に扱うことも可能だ。
自動運転車とコネクテッドカーの時代に合わせて、88Q5050にはセキュリティ機能が搭載されていることも大きな特徴だ。DPI(Deep Packet Inspection)と呼ぶ、96バイトまでのイーサネットパケットについてフィルタリングできる機能をハードウェアマクロとして集積した。DPIのフィルタリングは、ホワイトリスト方式とブラックリスト方式の両方に対応している。DPIに必要な密結合メモリを扱えるように、プロセッサコアとしてARMの「Cortex-M7」を搭載。システム起動時のセキュリティを確保できるTrusted Boot Technologyも採用している。
マーベル オートモーティブソリューショングループ ビジネスデベロップメント担当ディレクターの倉臼あんどりゅ(Andrew Klaus)氏は「当社は日本の車載ソフトウェア標準化団体であるJasParの活動にも積極的に参加している。JasParの次世代車載高速LANのワーキンググループでは、2017年のテーマの1つが1000BASE-T1になっている。対応するICを唯一供給できるベンダーとして活動の一助となっていきたい」と述べている。
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