車載イーサネットで自動運転からミラーレス車まで貢献、マーベルの事業方針車載半導体

Marvell Semiconductorはエンタープライズ向けなどで培ってきたイーサネットの実績を生かし、車載向けでも存在感を高めようとしている。ドイツに車載イーサネットの開発拠点を設けた他、日系自動車メーカーに向けても積極的に働きかけていく。

» 2016年06月23日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 マーベルジャパンは2016年6月22日、東京都内で会見を開き、同社が注力する車載イーサネットに関する説明会を実施した。

Marvell Semiconductorsのアレックス・タン氏 Marvell Semiconductorsのアレックス・タン氏

 Marvell Semiconductorはエンタープライズ向けなどで培ってきたイーサネットの実績を生かし、車載向けでも存在感を高めようとしている。2015年に「世界初」(同社)となる伝送速度が1Gビット/秒(Gbps)の車載イーサネット対応のトランシーバICを発表し、サンプル出荷を始めている。

 伝送速度1Gbpsの車載イーサネットは2016年7月にも規格として正式に承認を受ける見通しだ。規格化に先駆けてサンプル出荷を始めたのは、新技術として早い段階で評価してもらう狙いがあるという。

 2016年4月にはドイツ・エットリンゲンに車載イーサネットの研究拠点を開設し、開発体制を強化した。「ドイツの自動車メーカーは車載イーサネットの導入で先行している。日本の自動車メーカーも興味を示しており、次世代の車載情報機器や自動運転システムで導入が進んでいくのではないか」(Marvell Semiconductors オートモーティブ・ソリューショングループ ディレクターのアレックス・タン氏)。

マーベルの車載イーサネット製品群

 同社はエンタープライズ向けなどでのノウハウを応用して車載専用に伝送速度1Gbpsの車載イーサネット開発プラットフォームをラインアップに加えた。TE Connectivityの車載用コネクタと連携する。

 この他にも、伝送速度100Mbpsの車載イーサネットの開発プラットフォームや、既存技術に対応している。トランシーバICやスイッチ、SoCなど、車両に搭載する上で必要な部品も取りそろえている。

マーベルの車載イーサネット製品群自動車向けにイーサネットが発揮する強み マーベルの車載イーサネット製品群(左)。自動車向けにイーサネットが発揮する強み(右) (クリックして拡大) 出典:マーベルジャパン

 自動車でイーサネットを重要視するのは「ローエンドからハイエンドのモデルまでカバーできるとともに、モデル切り替え時の設計変更にも柔軟に対応可能な共通のアーキテクチャを採用できるメリットがあるからだ。また、ハーネスは低コストで軽量化にも対応している。さらにイーサネットは、PCや各種通信機器などで長い実績のある枯れた技術なので従来のツールを活用して容易に搭載できる強みもある」(タン氏)。

車載イーサネットはデータ通信量の多い部分から

 車載イーサネットが搭載されるのは「データ通信量の多いところからになる。例えば、映像やオーディオに加えて、LTEなど車外とのコネクティビティにも使われる。伝送速度100Mbpsの車載イーサネットは既に採用している自動車メーカーもある」(同氏)という。

車載イーサネットの採用が見込まれる部位ギガビット帯域が自動車の進化に貢献 車載イーサネットの採用が見込まれる部位(左)。ギガビット帯域が自動車の進化に貢献(右) (クリックして拡大) 出典:マーベルジャパン

 同社は、消費電力の低さや車載用としての堅牢性、伝送速度100Mbpsから1Gbpsに置き換え可能な互換性のあるソリューションをそろえている点を自動車メーカーに訴求していく。

 伝送速度は車載情報機器の進化や自動運転車のコスト低減で重要な役割を果たすという。「ギガビット帯域を活用することで、複数の4Kの映像や非圧縮の画像の転送が可能になる。今日現在存在している技術を採用するだけで実現できるのが特徴だ。また、自動運転車のコストを下げるポイントは通信速度を100Mbps以上に引き上げることだ」と同氏は説明した。

 さらに、ミラーをカメラで置き換えるミラーレス車でも貢献できるという。「車載イーサネットなら高い解像度を確保できる。全てのミラーがカメラに置き変わらなくても、ミラーとカメラの併用は増えてくる。複数のカメラの映像を扱うのはイーサネットの得意分野だ」(同氏)。

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