自動運転の高度化、さらには無人運転へとクルマが進化しようとしている。運転の在り方が変わればコックピットも変化する。その方向性について、車載半導体大手のルネサス エレクトロニクスに聞いた。
ドライバーによる周辺監視が不要な自動運転システムを目指し、自動車メーカーやサプライヤの開発が進んでいる。政府や自動車各社のロードマップでは、高速道路や駐車場といった限定的なエリアを手始めに、一般道や市街地へと対象を広げて自動運転車が製品化される見通しだ。
今日までの自動車では、ドライバーは常に周辺監視を行いながら、速度やエンジンの回転数、シフト位置、運転支援機能の作動状況などを表示するメーターにも注意を払わなければならない。
自動運転で周辺監視が不要になれば、メーターは従来の情報に限らず、快適性を高めるための表示も増えていくことが考えられる。また、メーターとは別体だったカーナビゲーションシステムとの融合も進んでいく可能性もあり、コックピット全体での開発がさらに重要になっていく。
自動運転時代のコックピットの在り方について、ルネサス エレクトロニクス 第1ソリューション事業本部 シニアエキスパートの吉田正康氏に聞いた。
MONOist 現在のコックピットに使われているICは?
吉田氏 アナログメーターの針の制御が求められる従来型のメーターはMCU(マイコン)が用いられており、われわれの製品では「RH850」が主流だ。カーナビゲーションシステムなどのセンターコンソール向けはSoCが使われており、当社ではR-CarのMクラスやEクラスが該当する。ヘッドアップディスプレイ向けはMCUだったり、小規模のSoCだったりと定まっていない。基本的には、メーター、センターコンソール、ヘッドアップディスプレイ、それぞれに別々のICが使われてきた。
MONOist メーターに組み込むディスプレイはカラー化や大画面化が進んでいる。これによって使うICは変わるか。
吉田氏 カラー化と大画面化はRH850で対応できるが、よりリッチな3Dの描画や、全面ディスプレイのメーターにはR-Carクラスの性能が必要になるだろう。全面ディスプレイのフルグラフィックスクラスタ向けに「R-Car D1」という製品を提案している。
MONOist NHTSA(米国運輸省・国家道路交通安全局)が定義するレベル3の自動運転では、ドライバーによる周辺監視が不要になる。その時のコックピットにはどの製品で対応するか。
吉田氏 レベル3の自動運転車では「統合コックピット」が導入されると考えている。レベル2までの自動運転を含め、手動運転中は、ドライバーが見ている一等地に出すべきものが決まっている。自動運転になれば他の情報が割り込めるようになる。自動運転中と手動運転中でメーターに表示する内容が変わるため、メーターとセンターコンソールが別々のシステムでは対応しきれなくなるだろう。
そこで統合コックピットの需要が高まる。例えば、センターコンソールからメーターにわたって連なる3つのディスプレイの間で、アプリケーションの表示を自由に動かすことなどが挙げられる。この時、画面同士を連携させるのに時間がかかったり、表示を移動させる時にカクカクしたりするのは、許されない。
MONOist 統合コックピットはR-Car1つで対応できるのか。
吉田氏 当社のフラッグシップのSoC「R-Car H3」クラスの性能で全て統合制御したいという声はいただいている。2020年以降の統合コックピットではH3でも足りないケースもあると考えているが、H3と同世代でミドルレンジの「R-Car M3」でできることもある。どの程度の解像度を求めるか、統合するディスプレイの数、映したいコンテンツの内容次第だ。
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