中国の市場激化やタイの市場低迷が響く、乗用車8社の新車生産自動車メーカー生産動向(1/2 ページ)

2025年2月の日系自動車メーカーの生産は、1月に続きメーカー各社によって明暗が分かれた。トヨタ自動車やダイハツ工業が2024年の認証不正問題の反動などで、SUBARU(スバル)も2024年が死亡事故で稼働停止した反動により大幅にプラスとなった。一方で、中国や東南アジアの低迷などにより日産自動車や三菱自動車などが大きく減少した。

» 2025年04月23日 11時00分 公開
[MONOist]

 2025年2月の日系自動車メーカーの生産は、1月に続きメーカー各社によって明暗が分かれた。トヨタ自動車やダイハツ工業が2024年の認証不正問題の反動などで、SUBARU(スバル)も2024年が死亡事故で稼働停止した反動により大幅にプラスとなった。一方で、中国や東南アジアの低迷などにより日産自動車や三菱自動車などが大きく減少した。今後もしばらくは中国での競争激化や、タイの市場低迷などが予想される。

 加えて、日系メーカーの主要市場である米国は、トランプ政権による追加関税の方針などが日々変化しており、米国の経済情勢を含めて先行きが見通せない状況だ。その中で、欧州などの一部メーカーが米国への輸出を制限するなど、「トランプ関税」の影響が広がり始めている。

 2月の8社合計の世界生産は、前年同月比3.2%増の197万759台と10カ月ぶりにプラスへ転じた。前年実績を上回ったのはトヨタ、ダイハツ、スバルの3社。中でも国内生産が大きく回復し、同18.7%増の69万8550台と2カ月連続で増加した。トヨタ、ホンダ、ダイハツ、スバルが国内生産で前年実績を上回り、特に前年同月が認証不正で稼働を止めていたダイハツやトヨタ、死亡事故の発生で稼働を止めていたスバルの影響が大きく表れた。

 海外生産は、前年同月比3.7%減の127万2209台と10カ月連続で減少した。地域別では競争激化が続く中国が同4.4%減と13カ月連続のマイナス。北米も、マツダ以外の4社がマイナスとなり、同4.4%減と7カ月連続の前年割れだった。

2025年2月の国内乗用車メーカーの生産実績
国内 海外 (うち北米) (うち中国) 合計
トヨタ 286,372 493,418 175,122 88,604 779,790
16.2 0.6 ▲ 1.1 25.6 5.8
スズキ 81,332 204,177 - - 285,509
▲ 8.8 3.0 - - ▲ 0.7
ホンダ 62,172 222,358 135,099 36,169 284,530
21.9 ▲ 8.8 ▲ 5.1 ▲ 21.7 ▲ 3.5
日産 52,198 185,784 106,819 24,890 237,982
▲ 13.2 ▲ 11.7 ▲ 7.6 ▲ 35.6 ▲ 12.1
ダイハツ 62,350 65,544 - - 127,894
831.7 ▲ 0.2 - - 76.8
マツダ 60,139 35,424 28,991 2,954 95,563
▲ 8.4 2.4 12.6 ▲ 29.5 ▲ 4.6
スバル 51,297 29,192 29,192 - 80,489
116.1 ▲ 19.5 ▲ 19.5 - 34.2
三菱自 42,690 36,312 - - 79,002
▲ 6.1 ▲ 13.5 - - ▲ 9.6
合計 698,550 1,272,209 475,223 152,617 1,970,759
18.7 ▲ 3.7 ▲ 4.4 ▲ 4.4 3.2
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、%
※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計

トヨタ自動車

 メーカー別に見ると、トヨタの2月のグローバル生産台数は、前年同月比5.8%増の77万9790台と2カ月連続のプラス。けん引したのが国内生産で、同16.2%増の28万6372台と2カ月連続で前年実績を上回った。前年が豊田自動織機の自動車用ディーゼルエンジンの認証試験不正で稼働を停止していたことや、新型車効果が台数を押し上げた。輸出も同13.0%増と伸長した。

 海外生産も、前年同月比0.6%増の49万3418台と12カ月ぶりに前年実績を上回り、2月の海外生産として過去最高を更新した。地域別で見ると、主要市場の北米は同1.1%減と3カ月ぶりのマイナスだったが、米国での堅調な需要もあり、大幅な落ち込みは見られなかった。中国も、依然として電気自動車(EV)の販売競争が続いているが、春節期間のずれにより稼働日が多かったため、同25.6%増と2カ月連続で前年を上回った。

 中国以外のアジアは、ローン審査の厳格化などにより主力拠点のタイが前年同月比3.8%減、インドネシアも同6.2%減と落ち込んだ他、インド(同3.8%減)、フィリピン(同3.7%減)やマレーシア(同11.7%減)も低迷。台湾(同10.3%増)やパキスタン(同49.5%増)などが増加したことにより、中国を含むアジアトータルでは同8.0%増と13カ月ぶりに前年実績を上回った。欧州は各国で稼働日が少なかったことで、同18.0%減と2カ月ぶりのマイナスだった。

スズキ

 1月に続きホンダと日産を上回り、トヨタに次ぐ2位につけたのがスズキだ。2月のグローバル生産は、前年同月比0.7%減の28万5509台と微減で、4カ月ぶりにマイナスへ転じた。3位のホンダとの差は979台と小差だった。このうち国内生産は、同8.8%減の8万1332台と2カ月ぶりに減少した。「スイフト」の新型車効果の一巡の他、輸出が「イグニス」の生産終了で同30.3%減と大きく落ち込み、2カ月連続で減少したことなどが響いた。

 海外生産は、前年同月比3.0%増の20万4177台と2カ月ぶりのプラス。世界生産の6割超を占めるインドは、「フロンクス」や「ブレッツァ」などSUV販売の好調や輸出の増加に加えて、2024年4月のマネサール工場の新ライン稼働や、2025年2月にカルコダ工場を操業開始した結果、同5.2%増と5カ月連続で増加。2月として過去最高を更新した。ただ、ハンガリーなどインド以外の海外生産は同16.2%減と24カ月連続で減少した。

ホンダ

 小差でスズキに越され3位のホンダ。2月のグローバル生産台数は、前年同月比3.5%減の28万4530台と7カ月連続のマイナスだった。このうち海外生産は、同8.8%減の22万2358台と7カ月連続で減少した。中でも中国は、EV市場の競争激化により販売が低迷。複数工場の閉鎖など生産調整を実施したことで同21.7%減と大きく減らし、7カ月連続で前年実績を下回った。アジアトータルも同18.2%減と10カ月連続で減少した。また、主要市場の北米もオハイオ工場でのEV生産ラインの設営工事などもあり、北米生産は同8.8%減と4カ月連続のマイナスとなった。

 一方、国内生産は大きく伸長した。前年同月比21.9%増の6万2171台と、5カ月ぶりに前年実績を上回った。前年が能登半島地震の影響により部品供給に支障をきたしていた反動が表れた。ただ、輸出は北米や欧州向けなどが落ち込み、同54.7%減と半減。2カ月ぶりに減少した。

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