リョービは「インターモールド2025」において、大型一体ダイカスト(ギガキャスト)に関する講演を行った。
リョービは「インターモールド2025」(2025年4月16〜18日、東京ビッグサイト)において、大型一体ダイカスト(ギガキャスト)に関する講演を行った。リョービ ダイカスト企画開発本部 研究開発部 参与の神重傑氏が登壇し、ギガキャストの特徴や自社の取り組みについて説明した。
ダイカストは再生塊を使いやすく、資源循環の観点で環境に優しい技術だといえる。再生塊の使用率はリョービで95%に上るという。自動車メーカー各社は、複数の部品を一体成型するギガキャストに注目しており、EV(電気自動車)の組み立てコスト低減や衝突安全性能向上に期待を寄せる。
ダイカストはエンジンのシリンダーブロックやトランスミッション部品にも用いられるように、成形性や寸法精度の高さが特徴だ。水路やブラケットなどを一体成型して機能を集約できる他、厚さやリブなど設計の自由度を生かして剛性を高められる。また、複数のパーツを溶接でつなぎ合わせていたバッテリーケースを1つの塊として成形することも可能だ。形状によって衝突時のエネルギーを吸収する機能を持たせることもできる。
車両の軽量化に対応するため、シャシーやボディーでもダイカスト部品が使われており、リョービでも部品を手掛けている。ピックアップトラック向けのフロントサスペンションハウジングのように、大きな部品にも対応してきた。
2050年前後のカーボンニュートラルの達成に向けて、EVやPHEV(プラグインハイブリッド車)の市場シェアが広がっていくと見込まれている。この影響を受けて、ダイカスト部品もエンジンやトランスミッション向けが減少するが、電動化部品の需要は拡大しそうだ。これに合わせてダイカスト部品に対するニーズも変わっていくという。
ニーズの1つは、鉄からアルミへの材料置換のためのダイカスト活用だ。強度保証が要求され、従来とは異なる材料や工法も必要だ。もう1つは、eAxleやインバーターケースなどの電動化部品で、これまでのダイカスト部品と共通する。
強度保証に必要なのは、高延性合金と高真空ダイカストだ。ADC12(アルミニウム合金)は鋳造性やリサイクル性に優れているが、延性が低く破断する可能性があるため強度保証には向かない。延性の高い素材を開発することで鉄からアルミへの置き換えが進んでいく。
高延性合金は熱処理を行うことで強度とのバランスをとれるが、使用できるのが新塊のみでは資源循環の面で見劣りする。再生塊が利用可能で、熱処理なしでも利用できるギガキャスト向けの素材が求められている。湯流れや離型性など、鋳造しやすさも要求される。
高真空ダイカストは、金型内を真空に近い状態にして溶湯を充填することで、溶湯が空気やガスを巻き込まないようにする。内部に鋳巣が発生しないようにすることで、成形後の部品に熱処理や溶接を施せる(シャシーやボディーのダイカスト部品は車体骨格に接合する必要がある)。
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