ギガキャストで先行するテスラは、修理方法の改良にも取り組んでいる。ギガキャストと衝突時にあえて破損させるクラッシュボックスをつなげることで修理のしやすさに配慮する。設備がまだ普及しておらず、熟練工の育成も必要だが、ギガキャストは溶接も可能だという。低速での衝突であればダメージが少なくバンパー交換で済むが、事故で修理する場合は損傷したクラッシュボックスを切断して修理する。衝突でギガキャスト部品が損傷する場合は車両としてのダメージも大きくなるため、修理は難しい。
ギガキャストで衝突安全性能を向上させるには、乗員を守るために壊れてはいけない部位と衝撃を吸収して壊す部位を設ける。縦割れせず小さな破片に壊れるような設計も必要だ。こうした設計は自動車メーカー各社が特許を持っており、金型としてデザインに対応することが重要になる。
2025年3月17日、リョービの菊川工場(静岡県菊川市)で大型製品の試作工場が稼働した。車体部品やバッテリーケースなど大型製品のギガキャスト試作が可能な設備を持つ。部品の試作サービスは中国勢が強いが、リョービも専任部署がすり合わせに当たる。軽量化やサイクルタイムの短縮、金型の作り込みなど生産の知見を共有しながら試作サービスを提供する。
菊川工場に導入したのは、UBEマシナリーの大型ダイカストマシンだ。型締力は6500トン。金型の加工や成形後の仕上げ、X線検査なども菊川工場で行える。
山口県宇部市が本社のUBEマシナリーから菊川工場に設備を輸送するのは、特殊車両の通行申請が必要になる大掛かりなイベントだったという。ダイカストマシンのリンクハウジングの輸送は、認可に数カ月を要した。菊川工場は港から25kmの距離にあり、当日は深夜に時速10kmで先導車を配備して移動した。金型の輸送も同様に手間がかかるとみられる。型締力が9000トンの大型設備になると、橋などの走行にさらに制限があり、輸送は一層難しくなる。
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