日産の第3世代e-POWERを支える「新燃焼コンセプトSTARC」と「5in1」電動化(1/2 ページ)

日産自動車は2025年度後半からシリーズハイブリッドシステム「e-POWER」の第3世代を投入する。まずは欧州向け「キャシュカイ」で採用し、2026年度には北米向け「ローグ」や日本向けの大型ミニバンにも搭載していく。

» 2025年04月16日 08時30分 公開
[齊藤由希MONOist]

 日産自動車は2025年度後半からシリーズハイブリッドシステム「e-POWER」の第3世代を投入する。まずは欧州向け「キャシュカイ」で採用し、2026年度には北米向け「ローグ」や日本向けの大型ミニバンにも搭載していく。北米にe-POWER搭載モデルを投入するのは初めてだ。

 e-POWERは2016年に第1世代の搭載モデルが登場し、現在は日本以外にも中国や欧州など68の国と地域で販売している。累計生産台数は162万台だ。当初はEV(電気自動車)「リーフ」のモーターと既存のエンジンを組み合わせており、搭載車種は「ノート」「セレナ」のように比較的小型なモデルに限られていた。

 第2世代からは発電用エンジンに排気量1.5l(リットル)の3気筒VCターボエンジンを採用して搭載車種を拡大し、エクストレイルやキャシュカイにe-POWERを導入した。また、「セレナ」向けにはe-POWER専用エンジンを新開発。日本の高速道路でもストレスなく走るための発電ができる性能を持たせた。

 第3世代では、キャシュカイやローグ、そして大型ミニバンなど比較的大きなモデル向けにe-POWER専用エンジンを開発した。高速走行での燃費を改善するとともに静粛性を磨く。モーターなど電動パワートレインも進化している。

試作車に搭載された第3世代e-POWER[クリックで拡大]

第3世代の発電専用エンジンは

 第3世代のe-POWERでは、WLTCモード燃費を平均9%、高速では15%の燃費改善を目指す。「高速道路での燃費が良くない」という声に応えた。ちなみに、第2世代のe-POWERを搭載するエクストレイルやキャシュカイの燃費は以下のようになっている。

第2世代のe-POWERを搭載するエクストレイルやキャシュカイの燃費
燃費 市街地モード 郊外モード 高速道路モード 超高速モード
エクストレイル2WD(WLTC) 19.7 17.3 21.7 19.7 -
エクストレイル4WD(WLTC) 18.4 16.1 20.5 18.3 -
キャシュカイ2WD(WLTP) 54.3(23.1) 56.5(24.0) 65.7(27.9) 61.4(26.1) 44.8(19.0)
エクストレイルと、キャシュカイのカッコ内の燃費は単位がkm/l。キャシュカイの燃費の単位はマイル/ガロン

 燃費改善の伸びしろを稼ぎ出したのは発電専用のエンジンで、燃費マップから見直した。既存のエンジンの燃費マップでは効率の良い領域は限定的だ。キャシュカイやエクストレイルの第2世代e-POWERで使用したVCターボエンジンは、非ハイブリッド車とも共用する前提だった。運転状態に関係なく燃費の“目玉”を狙える発電専用エンジンであっても、高効率な領域以外を使わなければならない場面がある。これが、高速道路での燃費に対するネガティブな評価の要因だという。

 第3世代のe-POWER専用エンジンは、熱効率を向上させて高速走行に必要な高トルク域での燃費を改善し、高効率な状態をより長く維持できるようにした。燃費マップはe-POWER向けに効率の良い領域を広げた。熱効率向上に貢献するのが、2021年に発表した燃焼コンセプト「STARC(Strong Tumble and Appropriately stretched Robust ignition Channel)」だ。

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