中国を除いてEVシフトの伸びが鈍化し、米国の第2次トランプ政権が日本の非課税障壁について圧力を高める中、日本発の急速充電規格である「CHAdeMO」の標準化を進めるCHAdeMO協議会は、今後どのような方針で活動を進めていくのであろうか。
中国を除いてEVシフトの伸びが鈍化している。しかし、踊り場を経た後、2035年に向けて、BEV(バッテリー電気自動車)/PHEV(プラグインハイブリッド車)が再び増加するとの予測もある。そのような中、日本発の急速充電規格である「CHAdeMO」の標準化を進めるCHAdeMO協議会は、今後どのような方針で活動を進めていくのであろうか。CHAdeMO協議会 会長の姉川尚史氏と広報部長の箱守知己氏にインタビューを行った。
和田憲一郎氏(以下、和田氏) 最初に、第2次トランプ政権による非関税障壁について聞きたい。報道によれば充電関係で2つの指摘がある。1つは、EV用充電ステーションの補助金支給要件にCHAdeMO規格の適合が義務付けられており、不公平ではないかというものだ。
姉川氏 EVの登場初期には急速充電インフラの整備が急がれたこと、また初期にはCHAdeMO方式が先行して仕様が整備されていたことから、CHAdeMO急速充電器への補助金が出されたと理解している。既に日本国内で約1万基の急速充電器が整備され、平地面積当たりの急速充電器密度としては中国を除いて、欧米を凌ぐ充電器密度になっている。このような状況を踏まえると、補助金を継続することについては再考する時期に至っているのかもしれない。
和田氏 もう1つは、高速道路での充電ステーション利用についてだ。日本メーカーのものはサービスエリア内に整備されているが、米国企業の充電ステーションは高速道路から一度出なければならず、差別的であると指摘されている。
姉川氏 高速道路のサービスエリアは急速充電器のみに設置されているわけではない。かつての高速道路では、高速道路外にあるお店で買い物をするために出入りすることは難しかった。しかし近年はETCの普及が進んだこともあり、一定時間内で高速道路を出入りできるようになるのではないか。実際に、道の駅がサービスエリアの外にある場所では、出入りができるようになっているところも増えてきている。今後は、ユーザーの利便性を上げるための工夫が進展すると期待している。
和田氏 中国を除いては、EVシフトの伸びが鈍化している。しかし、踊り場を経た後、2035年に向けて、BEV/PHEVが再び増加するとの予測もある。CHAdeMO陣営としては、このようなEVシフトの伸び鈍化や再度の増加、急速充電器の将来像について、どのような見方をしているのか。
箱守氏 自動車メーカーはBEVでは利益が出にくい状況と思う。特にBEVでは、急速充電器を要所要所に設置して電池の積載量を合理的にしていく必要がある。ただ、BEVの購入を初めて考えるユーザーは走行距離を重視する傾向にあり、メーカーとしては長い走行距離をPRするため積載量が多くなるという呪縛から逃れられていない。BEVのユーザーは自分自身の必要な移動状況を踏まえて、適切な電池量のBEVを選ぶことも社会全体の無駄を省く上で重要なことと思う。
一方で、急速充電は必要な時に確実に実施できないと、電欠間際で急速充電器にたどり着いたユーザーにとっては深刻な事態となる。そのためCHAdeMO協議会では、仕様書の定期的なバージョンアップや検定制度の充実を図って、確実に充電ができるように努力してきた。最近ではさまざまな車両と急速充電器の相互互換性(インターオペラビリティー)を1カ所で確認できる、「CHAdeMOマッチングテストセンター」を三重県伊勢市に開設し、自動車メーカー、急速充電器メーカーに活用していただいている。
また、急速充電時間を短縮したいという要望に応えるための仕様拡張を行っている。東光高岳とe-Mobility Powerが開発した次世代超急速充電器(最大出力350kW/口、総出力400kW)は、CHAdeMO協議会の最新「CHAdeMOプロトコル2.0.2」に合致するとして認証を発行した。CHAdeMO規格において、最大出力350kW/口(総出力400kW)、最大電圧1000Vの急速充電器の認証取得は世界初となる。
和田氏 CHAdeMO協議会の会員数について、2024年は2023年と比較すると、国内は微増となっているが海外はかなり減少している。これはどのような要因があるのか。EVシフトの伸び鈍化や、NACS(北米充電規格)などの影響があるのか。
箱守氏 北米は最近まではCCS1、そしてテスラ系のNACSに転換した。欧州はCCS2、中国はGB/Tとそれぞれ規格が固まってきたことも要因と思う。ただし、急速充電ビジネスが将来伸びると期待して中国や台湾の急速充電器メーカーがCHAdeMO仕様の急速充電器の製造販売を開始するために入会する事例もある。
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