和田氏 ChaoJi(CHAdeMO3.0)の現在の状況について教えてほしい。
姉川氏 中国では、ChaoJiがGB/T規格として承認されたものの、ChaoJi規格が搭載された車両は市場に出ていないようだ。背景には、現在のGB/T規格も高出力化を図っており、自動車メーカーはそれで十分との考えと聞いている。いずれにしても、自動車メーカーが必要性を感じないと、ChaoJi規格の車両や急速充電器は普及が進まないのではないだろうか。これは日本も同様である。
なお、ChaoJi規格搭載の車両がGB/TやCHAdeMO規格の急速充電器で充電可能にするためのアダプター、逆にGB/TやCHAdeMO規格の車両がChaoJi規格の充電器で充電できるようにするアダプターの開発は検討中である。
和田氏 ChaoJi規格に関して、ASEAN諸国などで採用の動きはあるのか。
箱守氏 バスなどの大型EVを開発中の会社でChaoJiに関心を示すところはあるが、実際に採用する動きはまだない。ただし、中国では香港においてChaoJiの展開を図る計画があると聞いている。また、中国電力連合会はASEAN諸国に対し、ChaoJiの採用を呼びかける活動を展開し始めている。
和田氏 ChaoJiとCHAdeMOの間のアダプター開発も、IEC(国際電気標準会議)の東京会議で標準化の進捗が図られたとのこと。この辺の状況について教えてほしい。
箱守氏 アダプターの規格はIEC TS 62196-7として進捗中である。2024年にDTS(技術仕様書案)が発行されたが、長時間の議論を要する技術的な修正が必要なため、DTS2として継続審議を行う予定となっている。
和田氏 新プロトコルのサブワーキンググループでは、ChaoJi、Ultra-ChaoJiは2線式イーサネットによりISO 15118に対応とのことだが、従来のWi-Fi方式から変更した経緯について教えてほしい。どのようなメリット、デメリットがあるのだろうか。
箱守氏 ChaoJiについては、開発当初より2線式イーサネットをターゲットとしていた。一方、CHAdeMOはCANを採用しているため、CANの通信は残し、ISO 15118の通信はWi-Fiで行うとしている。ChaoJiは2線式イーサネットでの規格化を進めるが、Wi-Fiも活用できるようISO 15118の規格化を進めたいと考えている。
なお、Wi-Fiはコネクターを挿す前から通信が行えるのでさまざまなアプリケーションが適用できる。例えば、予約した充電器までの誘導、予約なしの場合でも充電器の地図を表示したり、希望する充電器まで誘導したりといったことも可能である。また、充電器の違いによる料金の違いなどを事前にドライバー(車両)に提示し、選択させたりすることもできる。ただし、Wi-Fiでは充電器と車両のペアリング手段が必要となるため、台数が増えたとき、通信が不安定となる可能性があるなどデメリットもある。
和田氏 アシストアームについて聞きたい。面白いアイデアだと思うが、実用化に向けてはどのように進んでいるのか。
箱守氏 ワーキンググループで試験などを行ったが、まだ試作段階に留まっている。その理由として、急速充電器の開口部がメーカーや車種によって異なり、統一することが難しいことから、アシストアームの利便性が得られにくいことがある。
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