マツダと日本製鉄が「調達の常識」を変える、新型CX-5でサプライチェーン効率化サプライチェーン改革(1/2 ページ)

マツダと日本製鉄が車体開発で「共創活動」を発表した。従来の鋼板ごとの価格競争をやめ、「車両1台分」の集約発注をデザイン段階から行う新方式に転換。新型CX-5で鋼板重量10%削減とサプライチェーン効率化を両立させた。

» 2025年10月27日 06時15分 公開
[安藤照乃MONOist]

 マツダは2025年10月24日、オンラインで記者発表会を開催し、日本製鉄との車体開発における共創活動の成果を発表した。この共創活動は、従来の鋼板ごとの価格入札から「車両1台分」の集約発注へという調達の抜本的な変革を伴うものだ。開発の初期デザイン段階から日本製鉄が参画することで、設計、生産、調達を含むサプライチェーン全体を最適化する。

 この共創活動の第1弾を、2025年7月に欧州で世界初公開したマツダの新型クロスオーバーSUV「MAZDA CX-5」の開発に適用した。これにより鋼板の軽量化やコスト抑制、生産拠点の集約などを実現している。

2025年7月に欧州で世界初公開した新型クロスオーバーSUV「MAZDA CX-5」 2025年7月に欧州で世界初公開した新型クロスオーバーSUV「MAZDA CX-5」[クリックで拡大]出所:マツダ

 (左)マツダ 取締役専務執行役員の向井武司氏、(右)日本製鉄 代表取締役副社長の廣瀬孝氏 (左)マツダ 取締役専務執行役員の向井武司氏、(右)日本製鉄 代表取締役副社長の廣瀬孝氏[クリックで拡大]出所:マツダ

マツダ「相当な覚悟のいる判断だった」

 従来、マツダは新型車の開発時に、使用する鋼板の種類や適用する部位ごとに複数の鉄鋼メーカーに見積もりを依頼した上で、より安価なものを選ぶ「価格競争」によって発注先を決定していた。この場合、鋼板が関わる領域の開発内容については自動車メーカーであるマツダに決定権があり、鉄鋼メーカーは指定された部位の中でしか提案できない。また、その時々の見積もり価格によって受注/失注を繰り返す不安定なビジネス関係を生み、サプライチェーン全体の「ムリ、ムラ、ムダ」を引き起こす要因となっていたという。

 今回の連携では、これを「車両1台分」の鋼板一括発注(集約発注)へと切り替えた。これにより、鉄鋼メーカーは要求された部位向けにより安価な鋼板を提案するのではなく、車体全体の構造から考えた最適な鋼板を提案できるようになった。

鋼板の調達単位を車両1台分の集約発注に変更 鋼板の調達単位を車両1台分の集約発注に変更[クリックで拡大]出所:マツダ

 また、集約発注を車体構造の開発に生かすため、鋼板の発注時期も改めた。従来は車両設計の完了後にサプライヤーが参画していたが、今回の取り組みでは車体の商品企画や設計段階から日本製鉄が参画することとした。両社は個々の鋼板だけに着目するのではなく、車全体で重量やコスト目標を設定し、部位ごとに最適な鋼板を選定することで、コスト面でも機能面でも改善が可能になるという。

マツダの鷲見和彦氏 マツダの鷲見和彦氏

 サプライヤー側である日本製鉄のメリットも大きい。マツダでは開発初期に車両モデルの計画販売台数を共有し、設計の具体化と共に使用する鋼板の種類や量が確定するため、日本製鉄側も早い段階から生産計画を立てやすくなるという。

 発表会で説明を担当したマツダ 常務執行役員 購買・物流・コスト革新担当の鷲見和彦氏は、「集約発注への切り替えは、従来の調達価格競争発注という常識から外れるものであり、マツダにとっても相当な『覚悟』のいる判断であった」と説明した。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR