ハーマンインターナショナルは車両の開発期間短縮に貢献する「Ready」製品の体験会を開いた。
ハーマンインターナショナルは2025年4月23日、車両の開発期間短縮に貢献する「Ready」製品の体験会をメディアなど向けに開いた。
Readyシリーズは、ディスプレイやHUD(ヘッドアップディスプレイ)、コネクテッドサービスなど“ほぼ完成品”のラインアップだ。ハーマンの親会社であるサムスンのコンシューマー向けの技術や強みも含めてパッケージ化した。自動車メーカーはソフトウェア面で自社のブランドに合わせて味付けを変えれば完成するというコンセプトだ。
ハーマンの得意分野の1つであるインフォテインメントシステムは、一般的に企画時と量産時のギャップが大きくなりやすい。自動車メーカーの仕様書をもらって作り込む従来の開発では5年ほどかかり、スマートフォンなど消費者が見慣れている技術との差が生まれるためだ。
Readyシリーズは2023年から展開しており、一部が2024年から量産車に搭載されている。2026〜2027年にかけても採用が決まっている。今後も提案を強化し、自動車メーカーの開発期間短縮に貢献したい考えだ。
Readyシリーズの1つが、OLED(有機ELディスプレイ)のような視覚体験をOLEDよりも低コストで導入できる「Neo QLED(NQシリーズ)」だ。車載用で現在主流のTFT液晶に対し、より高性能なフルアレイローカルディミングが開発されているが、NQシリーズは同等のコストでより高度な映像表現に対応する。TFT液晶からのステップアップや、OLEDの搭載がコスト面で厳しいケースに向けて提案していく。
NQシリーズは、サムスンの技術であるカドミウムフリー量子ドットフィルムと青色ミニLEDバックライトディスプレイで構成されている。映像技術の規格「HDR10+」にも対応している。
HDR(ハイダイナミックレンジ)は映像の白飛びや黒つぶれを防ぎながら映像を鮮明にする技術で、明暗差を10bitで表現する「HDR10」という規格がある。HDR10+はその拡張版で、輝度情報を含むメタデータをシーンごとに変更し、自動で輝度を調整する「ダイナミックメタデータ」に対応している。輝度やコントラスト、発色をより自然に高められる。HDR10+はパナソニックとサムスンが決めた規格だ。民生用で開発された規格をいち早く車載用でも取り入れられるのがサムスングループの強みだとしている。
HDR10+のディスプレイが市場に出ているが、配信サービス大手のNetflixはHDR対応の全コンテンツをHDR10+にすることを表明するなど、HDR10+のディスプレイで楽しめるコンテンツも増えている。HDR10+に対応したNQシリーズを車載用ディスプレイとして搭載すれば、車内でホームエンターテインメントレベルの視聴を楽しめる。
NQシリーズは価格ごとにTFT液晶からの置き換えを狙う「NQ3」、中間の「NQ5」、OLEDのような画質や解像度でOLEDよりもコストを抑えられる「NQ7」の3種類を用意した。NQ3とNQ7はLEDの使用数が違うため、明るさと薄さに差がある。NQ5は後部座席向けのエンターテインメントシステムとして採用が決まっている。
NQ7は曲面パノラマにも対応する。ディスプレイのフィルターでドライバーモニタリング用カメラを隠すことも可能。ドライバーモニタリング用のカメラは、目立つことでデザイン性を損なうだけでなく、乗客に「見られている」とプレッシャーを与えることもあるため、隠すニーズが高まっている。
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