ディスプレイが多用されて情報量が増えるが、ドライバーにとっては視線移動が少ないことが重要だ。一部車種で搭載される電子ミラーも、視線移動が負担になるという意見が出ている。
視線移動を少なくする装備としてすでにHUDが普及しているが、ハーマンはフロントガラスの下部を投影に使うことを提案する。HUDは運転に必要な情報を表示し、ガラスにはそれ以外のデータを表示するなど使い分けることも可能だ。ただ、これを搭載しながら十分な前方視界を確保するにはダッシュボードの高さを下げる必要があり、自動車メーカーは開発時点からデザインを検討しなければならない。
HUDの表示を風景に重ねることができるAR HUDは、複数のサプライヤーが提案している。ハーマンは、AR HUDの表示内容を編集できるソフトウェアとハードウェアをセットで提案する。
ハーマンはこれまでにAR HUDを開発する中で、路面の表示の意図が分かりにくいなどさまざまなフィードバックを得た。それを踏まえ、分かりやすく意図が伝わりやすい表示を研究。AR HUDでのレーンチェンジの指示であれば、車線変更の動きに合わせて表示のアニメーションをスムーズに変化させ、車線変更が完了すると速やかに目立たない表示にするなど、分かりやすさを追求した。
こうした分かりやすさや見やすさを重視した表示デザインがテンプレートとして開発ソフトウェアに用意されている。AR HUDの表示を開発する自動車メーカーはテンプレートの配置を変更したり、入れ替えたりすることで表示をデザインできる。表示する情報を増減させたり、自動車メーカー独自のデザインを追加したりすることも可能だ。
ドライバーモニタリングシステムは、ステアリングからドライバーの正面を撮影するカメラと、後部座席も含めてモニタリングできる上部のカメラを併用する。これによって、わき見やまぶたの開き具合から分かる眠気のような既存の機能だけでなく、ストレスや認知状態の分析などさまざまな機能もセットで提供する。
ストレス状態の推定は、ドライバー正面のカメラで心拍数や表情を、上部のカメラでドライバーの呼吸数を見ることで行う。上部のカメラはドライバーの胸の動きを基に呼吸数を算出する。これらのデータをECU(電子制御ユニット)に搭載した学習済みの機械学習モデルで分類し、ストレスの度合いを総合的に判断する。
認知状態の分析は、「前を見ているが集中できていない」というときに的確にアラートを出すために開発している。表情や目線を元に、集中できているかどうかを判定する。ハーマンの社内にある「ハーマンX」という研究組織に所属するニューロサイエンティストやデータサイエンティストが協力して開発した。サムスンのスマートウォッチなどヘルスケア系のアルゴリズムも活用している。
このドライバーモニタリングシステムでは、ステアリングを握っているかどうか、飲食しているか、ながら運転をしていないか、シートベルトを着用しているかなども検出できる。
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