　バッテリー温調モジュールは、バッテリーに冷温水を供給し、バッテリー内部の温度制御を行う製品である。バッテリーの温度制御に必要な複数の機能をモジュール化しており、車両の空調システムから独立して動作することにより、バッテリーに特化した最適な温度制御を実現している。電動大型トラックの走行性能の向上やバッテリー寿命の延長に貢献する国内初の製品だという。

バッテリー温調モジュールのシステム構成図［クリックで拡大］出所：デンソー

　開発のポイントは3つある。1つ目は、空調システムと切り離した温度制御機能のモジュール化である。ヒートポンプサイクル、ラジエーター、ヒーター、ポンプなどのバッテリーの温度制御に必要な機能を、空調システムと切り離してモジュール化した。これにより、車室内空調に影響を与えることなく、バッテリーに最適な温度制御（夏は冷却、冬は加温）を実現している。

　2つ目は走行環境／シーンに合わせた省エネルギーな冷却制御だ。外気温度や冷却水の温度に応じて、ヒートポンプサイクルとラジエーターの使用を切り替える2つの冷却モードを搭載し、走行環境／シーンに応じた最適な温度制御を実現した。さらに、ヒートポンプサイクルを使用する場面では、デンソー独自の高効率設計により、市場に流通する同等の冷却能力を持つバッテリー温調モジュールと比較して、20％以上高いCOP（エネルギー効率を示す成績係数）を達成した。

　3つ目はコンパクト設計と性能／サイズの両立である。コンパクト設計は、ヒートポンプサイクル開発で培った高い放熱性能を持つ熱交換器などを活用することで実現した。サイズ当たりの冷却性能で業界トップレベルを達成しており、車両の実用性を支える高性能技術を省スペースで提供できている。

　物流業界は日本の経済と暮らしを支える重要な社会基盤だが、その一方でエネルギー消費量が大きい産業の一つであり、カーボンニュートラルの達成には長距離輸送を担う大型トラックの脱炭素化が不可欠だ。その手段として、電気で駆動する電動トラックが注目されており、日本政府もその普及を国策として加速している。

　電動大型トラックは、走行時にバッテリーを高出力で使用するため、従来よりも高いバッテリー冷却能力が求められる。また、バッテリー温度を精密に制御することで、バッテリー寿命を延ばすとともに、過酷な運行条件下でも高出力で安定稼働させ、走行性能を維持することが重要だ。

　デンソーは、この課題に対応するため、これまでのカーエアコン開発で培った高効率、高性能、小型化の技術を生かし、サイズ当たりの冷却性能で業界トップレベルを誇る今回のバッテリー温調モジュールの開発につなげた。

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