日本電産は2016年度第3四半期決算を発表。会見で同社会長兼社長の永守重信氏は「1000人規模の中途採用を、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、回路、通信、生産技術を中心に進めている」と語った。
日本電産は2017年1月24日、東京都内で会見を開き、2016年度(2017年3月期)第3四半期決算を発表した。第1〜第3四半期の累計では、売上高が前年同期比3.0%減の8682億2800万円にとどまったものの、営業利益が同17.6%増の1061億9700万円、税引前利益が同16.6%増の1077億7100万円、純利益が同17.4%増の816億3800万円となった。通期業績予想も、売上高は1兆2000億円に据え置いたものの、営業利益と税引き前利益は1400億円、純利益は1000億円と2016年度第2四半期の決算発表時から上方修正した。
同社会長兼社長の永守重信氏は「2016年度の第3四半期は、第2四半期と比べて費用が33億円ほど増えている。これは、2017年度まで実施する1000人規模の中途採用で既に約500人を採用していることと、一方で2020年までに工場のワーカーを8万人から4万人に削減する計画のうち1万8000人を削減したことに加え、2017年4月から全ての子会社を日本電産ブランドに統合するためのものだ」と語る。
1000人規模の中途採用は、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、回路、通信、生産技術を中心に進めている。第3四半期までの約500人で12億円の人件費アップにつながっているが、今後も積極的に採用を進めたい考えだ。これらの人材は「トップライン(売上高)を高める方向性で7割、生産性の向上に3割というイメージで貢献を期待している」(永守氏)という。
人材採用に向けた知名度向上のために、テレビCMを中心とした広告宣伝費も約2億円計上した。永守氏は「連日100万円の札束を投げるかのようにテレビCMを流しているわけだが、いい人材を採用するには知名度が必要。やる時は徹底的にやる」と述べる。
事業別では、HDD用モーターの需要減により売上高が下降トレンドにある精密小型モーター事業が底打ちし、売上高、営業利益率とも成長軌道を描けるめどが立ったとした。
永守氏は「HDD用モーターの減少を、高単価のモジュール製品中心のその他小型モーターの成長で補えなかった。2017年度以降は、HDD用モーターが数量は増えなくても収益性が高まり、その他小型モーターは新製品の連打で二桁超で成長する。これにより、2020年度に売上高6000億円、営業利益率20%を確保できる見通しだ」と説明する。
日本電産は、中期経営計画「Vision2020」で、2020年度に連結売上高2兆円、営業利益3000億円の達成を目標としている。永守氏は、これらの目標のうち、売上高2兆円よりも営業利益3000億円を重視していると語り、そのためには同氏が提唱する「井戸掘り経営」「家計簿経営」「千切り経営」から成る三大経営手法(マイクロマネジメント)を国内外で徹底することが不可欠と主張した。
永守氏は「国内子会社は、多くのところで営業利益率15%を出せる実力はついてきた。海外はまだ営業利益率が10%程度にとどまっているところが多く、三大経営手法による改善を進めたい。また間もなく連結対象になるEmerson Electricのモータードライブ事業も、買収のクロージングに時間がかかったこともあり、その間に収益性に悪影響が出ているだろう。ピッチを上げて収益改善を進めたい」と意気込む。
さらに2030年度の連結売上高10兆円を目指す「Vision2030」に向けては、人材の強化を注力策として挙げた。2017年春に完成するグローバル研修センターや、2018年1月に第1期工事が終わる予定の生産技術研究所などは、社員の能力向上のための布石になる。
日本政府が推進している「働き方改革」は日本電産でも注力する方針だ。しかし「抜本的に生産性を高めることが重要で、その結果として残業時間が減る。残業時間を減らすことが目的ではない」(永守氏)と強調した。
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