2016年は、VRと同様にAR(拡張現実)も話題になった。スマートフォンゲームアプリ「Pokemon GO」のおかげだが、VRと異なる点もある。VRは専用ハードウェアの低価格化がブームの引き金になっているが、ARはスマートフォンやタブレット端末という既存のハードウェアに表示するレベルにとどまっているのだ。
ARの専用ハードウェアは、シースルー型のスマートグラスになるだろう。しかしグーグル(Google)が「Google Glass」の販売を中止したことなどもあってか、HMD型VRシステムに比べると開発が足踏み状態にある。マイクロソフト(Microsoft)の「HoloLens」も一般発売が始まったが、価格は33万3800円で安価とはいえない。
しかし製造業における3Dデータ活用の本命はARになるはずだ。IoT(モノのインターネット)やインダストリー4.0について語られる時、「デジタルツイン」「バーチャルツイン」というキーワードがよく出てくる。現実世界のデータをIoTによって取得し、それとほぼ同じ双子(ツイン)をデジタル/仮想世界に作り出す――そして、この双子をAIやシミュレーションで最適化し、その最適化プロセスを現実世界でも実行するというものだ。
ただし、デジタル/仮想世界の結果を現実世界に反映するプロセスに人間が関わる時、人間に分かりやすいように見せる必要がある。その最重要パーツとなるのが、現実世界にオーバーラップする形で表示されるAR(この場合はMR:複合現実かもしれない)になるというのだ。その場合、ARを表示するのは専用ハードウェアのスマートグラスであることが望ましい。
既に、工場をはじめとする現場作業の支援という形で、ARとスマートグラスの普及は始まっている。VRのようなコンシューマー向け中心の爆発的な普及ではないが、B2B向けから需要が立ち上がっていることにより急速な市場の縮小ということもなさそうだ。
3DデータのAR活用に注力している企業としてはPTCが挙げられるだろう。2015年11月に買収したAR開発プラットフォーム「Vuforia」を中核に据えるとともに、3D CAD「Creo」で作成した3Dデータを軽量化してARコンテンツに利用しやすくするツールの開発も進めている。3D CADで作成したデータは、製品設計の根本になっていることもあり、現実世界のモノと重ね合わせるARコンテンツに最適だからだ。
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