AIGジャパンとサイバーダインは損害保険分野での業務提携を締結した。AIGジャパンが展開する傷害保険をはじめとする損害保険と、サイバーダインのサイバニクス技術を基にしたロボットやバイタルセンサーなどを組み合わせて新たな保険商品の開発を進める。
AIGジャパンとサイバーダインは2016年11月21日、東京都内で会見を開き、損害保険分野における業務提携の締結について発表した。AIGジャパンが展開する傷害保険をはじめとする損害保険と、サイバーダインのサイバニクス技術を基にしたロボットやバイタルセンサーなどを組み合わせて新たな保険商品の開発を進める。既に商品化を進めており、政府当局への許可申請についても2017年初旬にも結論が得られる見通し。
AIGジャパン社長兼CEOのロバート・ノディン(Robert L. Noddin)氏は「サイバーダインとの業務提携を提携した今日は、AIGグループにとっても、保険業界にとっても、記念すべき1日になった。これまで保険業界に対しては『悪いことがあったときに出てくる』『受身』のイメージがあった。このイメージを変えるための、AIGジャパンの事業戦略コンセプトが『ACTIVE CARE』だが、今回の提携により具体的な実践にうつせると考えている」と語る。
サイバーダイン社長兼CEOの山海嘉之氏は「今回の提携は、テクノロジーと、損害保険という社会の仕組みが連携して動く点で、革新的な取り組みになる。リスクに備える従来型の保険とは異なる『リスクを戦略的に低減していくような保険』を実現できるだろう」と述べる。
サイバーダインは、介護/作業支援用ロボット「HAL」やロボット治療器「HAL医療用下肢タイプ」などを展開している。今回の提携は、約1年半前の2015年中ごろに、AIGジャパンのノディン氏がサイバーダインを訪問し、サイバーダインのロボットを体験したところから始まった。「AIGグループ、保険業界、日本にとって大きなチャンスになると感じた」(ノディン氏)という。
山海氏の言う「リスクを戦略的に低減していくような保険」とはどのようなものか。ノディン氏、山海氏とも、政府当局の許可が下りるまで具体的なことは話せないとしたものの、現場での危険な作業が伴う建設業界などで広く採用されている傷害保険への適用が事例として挙がった。ノディン氏は「作業支援用ロボットのHALは、現場での負荷やリスクの低減につながる。また、事故によって受けた障害からの回復を早めるのに、HAL医療用下肢タイプが役立つだろう。これまで傷害保険は、契約した企業や個人に対して、事故が起きた後に保険金を支払うことしかできなかった。今後は、事故のリスクを低減し、万が一の事故からの回復についてもサポートしていくことになる」と強調する。
山海氏は「サイバーダインは、サイバニクス技術を応用した製品として、ロボットだけでなく動脈硬化度/心電用バイタルセンサーなども開発している。こういったバイタルセンサーとの組み合わせであれば、企業向けだけでなく個人向けの傷害保険との組み合わせも考えられるだろう」と説明する。
また、サイバーダインのロボット製品は全て、Wi-Fiなどの通信機能を持つIoT(モノのインターネット)デバイスでもある。「これまで数年単位の実績ベースの統計分析を基に行っていた保険商品の枠組みや価格の改定も、IoTデバイスから得られる情報によって革新が訪れるだろう」(ノディン氏)という。サイバーダインも、川崎市の国家戦略特区で、同社製品からのビッグデータを集積し人工知能などで解析する、ビッグデータ処理センターの設立を構想している。
山海氏は「当社がさまざまな取り組みを進めているドイツでは、約8700万人の国民のうち約7000万人が参加するBG RCI(公的労災保険機関)による、リスク低減や予防を目的とした保険がある。しかし日本では、同様の保険がこれまでなかった。今回のAIGジャパンとの提携は、日本におけるリスク低減や予防を目的とした保険の先駆けになるだろう」と述べている。
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