格付け会社のMoody’s(ムーディーズ)は、自動運転車の普及によって自動車保険会社のビジネスモデルが大きな影響を受けるだろうという見通しを発表した。
格付け会社のMoody’s(ムーディーズ)は2016年3月29日(米国時間)、自動運転車の普及によって自動車保険会社のビジネスモデルが大きな影響を受けるだろうという見通しを発表した。
同社によれば、自動ブレーキや先行車追従、車線逸脱防止といった運転支援システムの普及によって、今後5〜10年は交通事故の発生が大幅に低減していくと予想。自動車保険会社にとって収益を高める要因になるとした。その一方で、より長期の視点では、運転支援システムの次にやってくる自動運転車の普及によって交通事故の発生が劇的に減少し、自動車保険に加入することのメリットが大幅に低下すると見込んでいる。
ムーディーズは報告書の中で「自動運転車は自動車保険会社にビジネスモデルの再考を促す一方で、その普及には数十年という時間がかかる。それまでに順応する時間は十分ある」と述べている。
また、「一度自動運転車が主流になってしまえば交通事故は急激に減少するだろう。その時、自動車保険の価値と損害保険業界の収益性は大幅に低下する。米国を含めた多くの国で、損害保険の売上高で最も大きいのが自動車保険だからだ」(同社)とし、自動車保険会社に自動運転車の普及による変化への対応を検討するよう訴えている。
これまで国内の自動車保険では、自動ブレーキなどの運転支援システムの搭載による割引制度はなかった。2013年7月にアメリカンホーム保険が導入しようとしたものの、政府の指導により見送られている(関連記事:「ぶつからないクルマ」の保険割引が中止に、金融庁の認可が必要だった)。
それから2年以上が経過し、新車への運転支援システムの装備率の高まりを受け、自動車保険各社は2017年1月から任意保険料を平均で1割程度割り引く方針を固めたと報道されている。
一方、ステレオカメラを使う運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」を展開する富士重工業によれば、アイサイト搭載車は非搭載車と比べて人身事故発生件数が約6割少ないことが分かったという(関連記事:スバル「アイサイト」でも交通事故はゼロにはならない、しかし6割は減らせる)。事故発生率が6割下がるのに対して保険料は1割しか安くならないわけで、ムーディーズの指摘する通り、足元の運転支援システムの普及は自動車保険会社の収益を向上させる要因になりそうだ。
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