ホンダは、公道で自動運転車を走行させる実証実験も始めた。最近では2015年に首都高速道路の一部区間で合流やレーンチェンジを含めた自動運転を成功させている。ただ、NHTSA(米高速道路交通安全局)らが定めた自動運転レベルのうち、今はまだ2段階目のレベル2に突入したところ。「高速道路の本線が混雑している時の合流はまだまだ難しい」(横山氏)という状況であり、「人間の操作が介在しないレベル4以降の完全自動運転時代に向けては多くの課題が残されている」(同氏)と語る。
例えば、道路状況が刻々と変わる中、自動で正確にクルマを走らせるには、高精度な3次元地図データを参照することも必要になる。その地図データのメンテナンスをどのように行うかが大きな課題だ。さらに、レベル4までは人の操作が介在するため、シチュエーションによって自動運転と手動運転の切り替え、いわゆる「ハンドオーバー」を安全確実に行うための手順作りも必要になる。
車車間通信や路車間通信(V2X)も組み合わせた多様な情報の管理、ドライバーの体形やスキルなどに合わせて車両側の装備を自動で変更する仕組み、さらには走行時に得られた経験を基に走行方法を最適化する人工知能的なシステムなども、自動運転で必要になると同氏は見ている。
完全自動運転を実現するには、法制度の面でも整備が必要だ。日本は道路交通法とジュネーブ道路交通条約、欧州はウィーン道路交通条約によってドライバーレスの自動運転車の公道走行が原則的には禁じられる形になっている。しかし、これらの法制度を見直す動きが徐々に現れ始めている。
法律や条約が見直されるまでは時間を要するが、ADASからレベル3〜4の自動運転へ進化させようとする動きは世界中で進行しており、改正は時間の問題といえる。
同社は今後の取り組み方として、技術面については他社と競争しつつ協調も図り、国際基準/国際標準の策定に協力していく。一般のユーザーが自動運転車を受け入れやすくなるための土壌作りにも力を入れていく方針だ。
特別講演では、日立オートモティブシステムズ(以下、日立)の内山氏が「日立のADAS技術開発および自動運転への応用」と題して、同社が将来の自動運転車の実現を目指して開発を進めている独自のADASについて詳細に解説した。
ADASや自動運転車を開発している多くのメーカーは、カメラやレーダー、あるいはレーザー光を用いるライダー(LiDAR)などのセンサーを使用し、それらを高度に処理するために専用の独立したシステムユニットを車両に搭載している。一方、日立が開発しているADASのシステムユニットは、これらとは少し異なり、車両が搭載するECUの代替として位置付ける「自動運転ECU」だ。
内山氏はこのADASについて、燃費、快適さなどクルマに求められる走行性能も含め「これらをバランスさせてユーザーに対する(クルマの)価値を上げる」ものだと語る。単純にセンサーからの情報を処理して安全に走行させる制御を行うだけでなく、車両のステアリング、ブレーキ、エンジン、駆動用モーターなどもコントロールする従来のECUとしての機能も兼ねることで、総合的な走行性能を高めることも目指している。
開発中のADASでは、白線だけに頼らないレーン維持と前走車への自動追従、自動レーンチェンジ、車車間/路車間通信(V2X)、車両の周囲360度の監視などを想定している。さらにはクラウドサービスとビッグデータ解析、人工知能技術を活用して、地図データの更新、渋滞や危険箇所の回避、路上の物体認識も視野に入れている。
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