デンソー電動開発センターの全貌、「スピード開発」で開発期間を2分の1に電動化(1/3 ページ)

デンソーが安城製作所内にある電動開発センターを報道陣に公開。従来比で開発期間を2分の1に短縮するという「スピード開発」を目標に掲げ、さまざまな取り組みを推進している。

» 2025年02月20日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]
デンソーの波多野智之氏 デンソーの波多野智之氏

 デンソーは2025年2月18日、安城製作所(愛知県安城市)内にある電動開発センターを報道陣に公開した。2020年6月に開設された同センターは、従来比で開発期間を2分の1に短縮するという「スピード開発」を目標に掲げ、さまざまな取り組みを推進している。

 安城製作所は1967年8月に開設されたデンソーの2番目の工場である。従業員数約5500人、総面積57万m2、建物面積36.5万m2で、EV(電気自動車)やハイブリッド車(HEV)に求められる電動化製品のグローバルマザー工場に位置付けられている。そして、同製作所の中核的な役割を果たしているのが電動開発センターだ。生産のみならず、開発や設計の人員を集約しており、先行開発から量産ラインの立ち上げ、安定化までを一貫して行う体制となっている。実際に、同センター所属の従業員数は約2400人で、安城製作所全体の4割以上を占める。

 デンソー エレクトリフィケーションシステム事業グループ 製造統括事業部長の波多野智之氏は「当社の電動化事業のありたい姿として、世界一品質の電動化製品をあらゆる地域のお客さまへタイムリーに提供し続けることを掲げている。これを実現するために、時代に先駆けて価値を生み出す“技術基盤”と価値創造を支える“人材”が強みになる」と語る。電動開発センターには、電動化製品に関わる“技術基盤”と“人材”が集約されているというわけだ。

電動化事業のありたい姿 電動化事業のありたい姿[クリックで拡大] 出所:デンソー

 波多野氏は、EVを中心とした電動化の将来市場動向として、欧州や中国が先行し、インドやASEANでの伸びはそれよりもゆっくりとしたものになるなど地域ごとの違いはあるものの「グローバルで電動化が進んで行くことは間違いない」と強調する。市場拡大と合わせて、電動開発センターにおける活動の重要性は今後も増していくことになる。

電動化の将来市場動向 電動化の将来市場動向[クリックで拡大] 出所:デンソー

 デンソーの電動化製品は、走る、曲がる/止まる、電源制御、小型モーター、そして非自動車領域となるeVTOL(電動垂直離着陸機)向けなど、幅広く展開されている。これらの中でも主力製品となるのが、走ると関わりの深いインバーターとモータージェネレーターだ。インバーターとの関連では、電池からの直流電力を交流に変換しモーターを駆動できるようにする上で重要な役割を果たすパワー半導体も手掛けている。

電動化事業の製品群 電動化事業の製品群[クリックで拡大] 出所:デンソー

 デンソーは、インバーターのパワー半導体を効率的に冷却する独自技術として、自動車のラジエーターの知見を生かした両面積層冷却を採用している。競合他社と比べて体積当たりの冷却効率は1.5倍に達するという。ただし、両面積層冷却のインバーターを量産するには高度なモノづくりの技術も必要になってくる。

インバーターを事例とした電動化製品の特徴 インバーターを事例とした電動化製品の特徴[クリックで拡大] 出所:デンソー

 電動開発センターは、インバーターに代表される高度な機能を備える電動化製品について、デンソーの総智/総力を結集してタイムリーに開発し提供するための「スピード開発」に挑戦している。このスピード開発の目標となるのが、開発期間を従来比で2分の1に短縮することだ。「2020年6月の開設から約5年の取り組みで、これまで採用実績の多いHEV関連の電動化製品は、目標の開発期間2分の1にかなり近づけられている。一方、EVについては、市場が立ち上がり始めた段階ということもあり、目標達成に向けて追い込んでいく必要があると考えている」(波多野氏)という。

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