開発工場3階は、2階の量産ラインで用いる最先端の生産技術を開発している。安城製作所はグローバルマザー工場なので、最終的には国内外の他工場にも展開される技術を開発していることになる。報道陣に紹介した生産技術は「バーチャル立ち合い」「生産準備におけるロボットのオフラインティーチング」「スパッタを抑制するレーザー溶接」の3つだ。
「バーチャル立ち合い」は、国や地域によって異なる量産ラインの設備の高さや配置などをMR(複合現実)技術を使って最適化するシステムである。開発工場の2階で量産ラインを立ち上げてそれを海外に横展開する場合、従業員の人種や構成などによって最適なレイアウトは異なる。従来は、国内の生産技術者が海外工場に出張するなどして対応していたが、バーチャル立ち合いによってそれらの作業を大幅に削減できるようになる。
「生産準備におけるロボットのオフラインティーチング」は、製品の3D CADデータにロボットの動作要素をあらかじめ組み込んでおくことで、ロボット動作のプログラムを自動で生成する技術だ。3D CADデータとCAMの連携により工作機械の加工プログラムを自動生成する技術は知られているが、ロボット動作のプログラミングは、製品の2D図面を読み取って付き合わせながら入力するのが一般的だった。2024年秋に完成したもので「世界初の技術」(デンソー)だという。今後は、熟練技術者が行っている周辺環境に合わせた最終的な微調整についても、自動化していきたい考えだ。
「スパッタを抑制するレーザー溶接」は、インバーターの大電力伝達に用いられる銅製バスバーのレーザー接合で量産ラインにおける不具合を起こさないための技術だ。レーザー溶接は、抵抗溶接やTIG(Tungsten Inert Gas)と比べて精度や生産性で優位性があるものの、高エネルギーを印加するため溶融した金属が周辺に散らばるスパッタが起こりやすい。特に銅はスパッタの量が多いといわれている。そこで、ドラレコカメラや高速度カメラ、測長センサーなどさまざまなセンサーを組み込んだレーザー溶接の実証機を用いて、スパッタの発生する条件を見いだした。これによって、スパッタの発生しにくいレーザー溶接を実現するとともに、万が一のスパッタ発生をリアルタイムで検知するシステムも活用し、銅バスバーのスパッタゼロを可能にしたという。
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