MONOistが2016年6月10日に開催したセミナー「自動運転技術開発の最前線2016〜ADASはどこまで進化するのか〜」で、先進運転支援システム(ADAS)にかかわる各社の取り組みや、自動運転車の実現に向けての課題などが語られた。ここでは、本田技術研究所による基調講演と日立オートモティブシステムズによる特別講演を中心にセミナーの内容をレポートする。
2016年6月10日、東京都内で、MONOistオートモーティブフォーラムが主催するセミナー「自動運転技術開発の最前線2016〜ADASはどこまで進化するのか〜」が開催された。登壇したのは本田技術研究所 第12技術開発室 上席研究員の横山利夫氏や、日立オートモティブシステムズ 技術開発本部 先行開発室 スマートADAS技術開発部 部長の内山裕樹氏ら4人。将来の自動運転につながる現在の先進運転支援システム(ADAS)の取り組み内容や課題、最新の技術について詳細に報告した。
基調講演では、本田技術研究所の横山氏が「高度運転支援および自動運転技術開発 ホンダの取り組み」と題した講演を行った。
ホンダがADASや自動運転車の技術開発を進めるモチベーションとしているのは、年間4000人を超える国内の交通事故死亡者の減少や、交通渋滞による6兆3000億円もの環境的/経済的損失といった問題解消への貢献である。
さらに、2050年には2人に1人が高齢者になると見込まれる超高齢化社会における移動困難者の支援や、多様なニーズによる輸送の小口化や高頻度化に対応する効率的な物流の実現に向けても、自動運転技術は必須になると考えている。
横山氏によれば、同社独自の調査の結果、半数近い人々が自動運転車の購入に肯定的だ。特にADAS装備車の運転経験者ほど自動運転車への期待度、受容度が高いことが明らかになったという。従って「自動運転の実用化に当たっては、ADASの普及拡大を推進し、ユーザーにその経験をできるだけ積んでもらうことも重要なポイントの1つになる」(横山氏)と述べた。
ホンダは既に多くの市販車両に「Honda SENSING」もしくは「Acura Watch」と呼ぶADASを搭載している。単眼カメラで路面の白線などを読み取って車両が車線をはみ出さないようにする車線維持支援システム(LKAS)や、レーダーにより前走車を検知して接近時に衝突回避を支援する追突軽減ブレーキ(CMBS)などがそれらに含まれる。
こうした機能に用いられるのは、レーダーやセンサー、カメラのような“車両側”の仕組みだ。これだけでなく、“道路側”からの情報を活用して、よりスムーズな交通を実現する機能についても、量産モデルに採用し始めている。
2016年6月に一部改良を施して発売したセダン「アコード」は、交差点の信号と連動する無線装置(光ビーコン)により、近くを通過する車両に現在の信号状態を通知できるようにする「信号情報活用運転システム」を採用した。
この機能は、間もなく赤信号になるタイミングで車両にブレーキの指示(警告)を出し、青信号に変わった時は車両に発進の指示を出す。交通管制センターなどとも連携して複数の信号の切り替えタイミングを調整すれば、より効率的で安全な交通流量にコントロールできるという。信号待ちのための停車時間を減らすことで、運転手にとってはストレスの軽減にもつながる。
同社は既に宇都宮市街の公道で信号情報活用運転システムの実証実験も行っており、無駄な加減速が発生しないことから燃費が10%程度改善したことを明らかにした。
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