2026年度に日産が目指す姿は、新車のファミリー開発で200億円削減電動化(1/3 ページ)

日産自動車が事業構造改革によって2026年度に目指す姿をおさらいする。

» 2025年02月20日 09時30分 公開
[齊藤由希MONOist]

 ホンダとの経営統合が白紙になった日産自動車。SDV(ソフトウェアデファインドビークル)など将来を見据えたホンダとの協力は2024年8月発表時点に立ち返って今後も検討するが、足元の地盤固めとなる事業構造改革が急務だ。日産自動車が事業構造改革によって2026年度に目指す姿をおさらいする。

事業構造改革「ターンアラウンド」とは

 日産自動車は2025年2月13日、事業構造改革「ターンアラウンド」の進捗状況について説明した。まずは、年間販売台数が350万台でも持続可能な収益性とキャッシュを確保できる体制を2026年度までに整える。事業の安定化と適正化を図った上で中長期的に商品競争力を向上させ、戦略的パートナーシップを活用して成長につなげる。

 2026年度に目指す姿として、固定費と変動費で合計4000億円を削減してコスト構造を最適化する。これにより、自動車事業の損益分岐台数を現状の310万台から250万台まで引き下げ、営業利益率4%を安定的に確保する。

 事業構造改革を実施しなかった場合、2026年度も足元と同水準の固定費が発生するという。新型車など商品投入に力を入れても為替レートの変動や将来への投資、環境規制への対応コストなど収益に影響を与える要素が多く、販売台数の増加に対して営業利益は微増にとどまると見込まれる。適切なコスト構造への変革は不可欠だとしている。

 2030年までの中長期的な取り組みをまとめた経営計画「The Arc」(2024年3月発表)では、販売台数の目標を450万台レベルと計画していたが、ターンアラウンドでは販売台数を350万台に見直している。

3000億円以上の固定費削減を目指す[クリックで拡大] 出所:日産自動車

3000億円以上の固定費削減

 固定費は3000億円以上の削減を目指す。販売費と一般管理費で2000億円、生産拠点の再編で1000億円、商品開発の効率向上で300億円の削減を見込んでいる。

 組織のスリム化も推進する。新規採用の抑制や早期退職制度によって間接従業員をグローバルで2500人削減する。さらに、1000人分の間接業務をシェアードサービスセンターに追加で移管し、労務費単価を低減。市場環境の変化に合わせて、マーケティングやスポンサーシップ、宣伝広告費の優先順位付けも徹底するとしている。

 生産拠点の再編ではグローバルの生産能力を20%削減し、現状の500万台から400万台に減らす。中国ですでに実施している生産能力の削減も含まれている(中国では150万台を100万台に削減)。中国以外の工場では生産能力を350万台から300万台に減らすことで工場稼働率を現状の70%から85%に引き上げる。

 車両とパワートレインの生産拠点で2025年度に5300人、2026年度に1200人の削減を予定している。2025年第1四半期にはタイ工場を、2025年第3四半期と2026年度にその他2工場を閉鎖する。2025年度に北米のスマーナ工場とキャントン工場のシフトも実施する。これにより年間470億円の固定費を削減するとともに年間400億円の変動費削減を見込む。

生産拠点再編のイメージ[クリックで拡大] 出所:日産自動車
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